研究課題
胎盤は受精後、胚体細胞系列(内部細胞塊 : ICM)と胚体外細胞系列(栄養外胚葉 : TE)に最初の分化(細胞運命決定)が起こる。胎盤組織へと分化するTEは、胚盤胞期にCdx2の発現亢進とOct3/4の発現低下により、胚体組織より分化し、細胞運命が決定する。本研究では、胎盤幹(TS)細胞を用い、Cdx2遺伝子のエピジェネティックな分子機構と分子間相互作用について解析する事を目的とした。本年度は、まず一過性に遺伝子発現を抑制するCdx2 遺伝子のノックダウンTS細胞(3株)を用いて、未分化TSマーカー遺伝子(ErrB, Eomes)の発現解析を行なった。その結果、いずれも発現量は20%以下に減少した。両遺伝子のプロモーター領域について、メチル化の解析を行ったところ、TS細胞に比べ高メチル化状態を示した(平均値:78.2%)。ノックダウン効率は約40%であったが、細胞形態に大きな変化はみられなかった。次に、永続性に遺伝子発現を抑制するCdx2 遺伝子のノックダウンTS細胞株(3株)を樹立した。2種類の未分化TSマーカー遺伝子の発現量は減弱し、ヒストン修飾も活性型(抗ヒストンH3-K(リジン)9とH3-K14のアセチル化および抗H3-K4のジメチル化抗体)で有為な変化を認めた。一方、非活性型ヒストン修飾には、ほとんど変化はみられなかった。さらに、Oct3/4遺伝子強制発現TS細胞株(2株)でも同様な傾向を示した。これらの結果より、TSの分化過程には、Cdx2遺伝子のエピジェネティックな分子機構を介した遺伝子発現が作用する事が示唆された。
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