研究課題
本研究では卵巣癌のエピジェネティックな修飾の異常が、癌早期からみられる点に着目し、エピゲノム変異を起こす制御因子を同定し、病態との関連性、遺伝子診断や分子標的治療の開発を目的とした。これまでの研究では、卵巣癌細胞株はメチル化供与体合成酵素(MAT2A)遺伝子の過剰発現が、RB1遺伝子のプロモーター領域のメチル化異常を引き起こし、癌化を誘導する可能性があり、MAT2Aの発現量が卵巣癌の悪性度を解析するための新規腫瘍マーカーとなりうることを示した。本年度は、卵巣癌組織(46症例)を用い、MAT2Aおよびターゲット遺伝子RB1の発現を解析し、検証した。その結果、卵巣癌組織のほぼ全例で、MAT2Aの発現増加は観察され、組織分類では、漿液性卵巣癌において最も発現の亢進がみられた。また、卵巣癌進行期が悪い症例では、MAT2Aの発現量が有意に増加していることが明らかとなった。一方でRB1の発現はほとんどの卵巣癌において減少しており、一部の検体でDNAのメチル化異常、遺伝子欠損、および遺伝子変異が見られることも確認した。また、正常卵巣組織ではMAT2Aの発現増加およびRB1の発現減少は認められなかった。今後さらに、摘出卵巣癌組織症例を増やし、MAT2A、DNMTsの標的遺伝子の発現量解析とエピゲノム解析を行う必要がある。また、患者基本情報に照らし合わせ、年齢、組織型、進行期、生命予後などについて、詳細な統計学的な検定を行ない、メチル化異常の発症機序について検討する必要がある。
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Cancer Chemother Pharmacol
巻: accepted ページ: accepted
Mol Clin Oncol
巻: 2(2) ページ: 212-218