研究課題/領域番号 |
23659770
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉川 裕之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40158415)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | HPV / 子宮頸がん / 組織型 / HPV型 |
研究概要 |
子宮頸癌の臨床病理的特徴と病変から検出されるHPVタイプとの関連について検討するため、2007-2011年に登録された多施設共同研究「子宮頸癌とHLAに関する症例対照研究」の298例のなかで、ハイリスクHPV単独感染が見られた臨床進行期IB1期以上の子宮頸癌199例を臨床病理学的に解析した。本研究では中央病理診断を行い、統一した基準での組織診断が行われた。また、HPVジェノタイピングにはクリニチップHPV検査を用いた。病変から検出されたHPVタイプの内訳は、HPV16陽性が104例 (52.3%)、HPV18陽性が48例 (24.1%)、そのほかのハイリスクHPV陽性が47例 (23.6%)であった。発症時の平均年齢は、HPV16陽性患者 (47.7±12.6歳)とHPV18陽性患者 (47.4±10.8歳)ではそのほかのハイリスクHPV陽性患者 (55.0±14.3歳) と比較して統計的に有意に若かった (各々 P=0.002 および P=0.004)。臨床進行期III/IV期の進行癌は、HPV16陽性患者 (29.9%) や HPV18陽性患者 (27.6%)のあいだで差が見られなかった (P=0.79)。近年増加していると報告されている腺癌 (腺扁平上皮癌を含む) の割合は、HPV16陽性癌の27.9%に対してHPV18陽性患者では47.9%と統計的に有意に高かった (P=0.004)。臨床進行期1b期の患者ではHPVタイプによる予後の差は見られなかったが、II期以上の症例に限るとHPV18陽性患者の方がHPV16陽性患者よりも有意に予後が不良であった (P=0.03)。以上の結果より、HPV18陽性癌ではHPV16陽性癌と同様に若年発症が多く、HPV16陽性癌よりも腺癌・予後不良の癌が多いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HPV陽性子宮頸癌の特徴が、組織型(腺癌、腺扁平上皮癌に多い)だけではなく、予後や疫学因子(分娩など)にもあることが判明してきたからである。また、HPV16陽性癌とその他のHPV陽性癌にも差があることが判明してきた。これにより、治療方法がHPV型別に議論される日も遠くないと推定される。
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今後の研究の推進方策 |
この症例対照研究は、HLAクラスIやクラスIIについても検討しており、HPV型別に癌になりやすいHLAアレルが判明することがわかりつつある。それに加えて、癌の性格にも、HPV型が関与することから、治療法の開発時点で、検討するべき項目であることもわかる。今後は、化学療法、放射線療法などの治療への反応についても調査したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 中央病理診断の完了 組織型に関する中央病理診断を完成させる。特殊染色用の切片が送付されていないものが数十検体残る。腺癌の中でも細分類を行うことになっている。2. 腫瘍マーカーの測定追加 組織型とも関連の深い、SCC(扁平上皮癌のマーカー)、CEA、CA125、CA19-9(これらは腺癌のマーカー)について、検討できる症例で調べてみると、HPV型との関連で注目すべきデータが出つつあるが、未検のものについては、中央で測定することにする。
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