研究課題
脳性小児麻痺(CP)は、分娩周辺期の低酸素イベントとこれに続く一連の脳損傷過程を経て、その病態が形成される。最近、中枢神経には黄体ホルモンとその代謝物を含む多くの神経ステロイドが存在すること、黄体ホルモン投与が外傷や虚血による脳損傷からの回復を早めることが明らかにされている。一方で、黄体ホルモンは切迫流産の治療薬としてすでに臨床応用され妊娠母体に投与され、その安全性が確かめられている薬剤である。そこで、黄体ホルモンのCP予防効果について、ラットモデルなどを用いて検証することを目的として本研究を開始した。ラットCP モデルについて検討したところ、妊娠母ラット(E17-19)にLPSを投与し、出生後(P1)に右頸動脈結紮と低酸素処置を行うモデルが、ヒトCPに類似した運動障害を呈することから、最も適切なモデルであることを確認した。しかしながら、1日齢新生仔に麻酔・手術・低酸素負荷といった一連の侵襲を加えると一定の率で死亡するため、手術手技の習熟と低酸素負荷時間の調節が必要であることが判明した。次に、ヒトにおいて、黄体ホルモンとCP発生との関連を調べる目的で臍帯血中の黄体ホルモンおよびその代謝物の測定系を確立するための検討を行った。アロプロゲステロン、5α,3α-ジヒドロプロゲステロンなど主要な黄体ホルモン代謝産物(神経作動性ステロイド)をGC-MS により測定する系を確立した。臍帯血およびラット脳サンプルでの検出のために、条件設定を行った。
3: やや遅れている
新生仔への侵襲が大きく、歩留まりが低くなることが判明したため手術手技や術後管理方法などに改良が必要となったことによる。
低酸素負荷の時間を短縮することなどで、死亡率低下をはかることで改善できる見込みである。また、今回の研究における黄体ホルモン代謝産物測定系を応用することで、ヒト臍帯血でも測定を行いCP発生や臍帯血ガス分析値などとの相関をみることができる。動物実験のバックアップとして、ヒトでのデーターの採集を開始する。
データーの採集・保存は、既存の設備で対応できる。動物実験が順調に進行しない場合には、動物サンプルでの測定費用を臍帯血での測定に転用して対応する。
すべて 2011
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産婦人科治療
巻: 102 ページ: 52-60(466-474)
日本内分泌学会雑誌
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