研究課題
【目的】プロゲステロン(P)はエストロゲン(E)作用を減弱するため、P作用の減弱はE作用の増強に働く。プロゲスチン投与で症状の改善しない症例の存在という臨床的背景や最近の基礎的知見から、E依存性疾患である子宮内膜症において観察されるP作用の減弱は「P抵抗性」と呼ばれ、子宮内膜症の病態への関与が強く推測されている。FKBP52 (FK)はコシャペロンとしてP受容体(PR)複合体を構成し,P-PR結合を強化する。P活性が減弱したFK欠損マウス(KO)は着床不全となるがPで救済され、その後もPが不十分だと流産することから、KOがP抵抗性を有することが知られる。本研究ではマウスモデルとヒト臨床検体を用いて子宮内膜症の病態へのP抵抗性とFKの関与を検討した。【方法】生理的なホルモン環境での同系マウス子宮の腹腔内移植により子宮内膜症マウスモデルを作成し、移植2週間後に評価を行った。また、インフォームド・コンセントのもと、ヒト子宮内膜・子宮内膜症組織のFK発現を定量的PCRと免疫染色にて検討した。【成績】ドナーおよびレシピエントマウスが野生型の場合(WT-WT)に比べ、双方がKOの場合(KO-KO)に病変数と重量が増加し、子宮内膜症のP抵抗性を支持する結果が得られた。WT-WTに比べKO-KOにおいてE誘導性液性因子MCP-1とVEGFの腹腔内濃度が高く、病変の新生血管も増加し、FK欠損によるE作用、炎症、血管新生の亢進が示唆された。また、非子宮内膜症女性の子宮内膜に比べ、子宮内膜症女性の正所性および異所性子宮内膜でFK低下が認められ、FK低下自体が子宮内膜症の病態形成へ関与する可能性が示された。【結論】以上の検討により、子宮内膜症の病態形成におけるFK低下とP抵抗性の関与が示された。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Endocrinology
巻: 152 ページ: 484-92