研究課題
生活習慣の欧米化や晩婚化に伴い妊娠糖尿病は増加している。妊娠中の代謝異常は、周産期・新生児合併症の増加に加えて、将来母体や児の2型糖尿病の発症に影響することから適正な対策が必要となる。本研究により、妊娠の維持に重要なエストロゲンは、マウスでは中枢作用を介して、白色脂肪組織での脂肪分解の促進、褐色脂肪組織での熱産生の亢進、運動量の増加により糖代謝を調節することが明らかとなった。また、妊娠に伴う精神変調に関連して、マウスはエストロゲンの欠乏によりうつ症状を呈したが、中枢性のエストロゲンの投与はうつ症状を効果的に改善した。エストロゲンによる中枢性のインスリン作用の制御が糖代謝の調節に重要なことから、PI3-キナーゼを介したインスリンの代謝作用を特異的に制御する5'-リピッドホスファターゼSHIP2を過剰に発現したトランスジェニックマウスを用いて、インスリンの中枢作用の負の制御機構につき検討した。その結果、視床下部SHIP2は、レプチン作用に影響を与えずインスリン作用を特異的に調節することで、摂食調節機構に関与して体重を制御することが明らかとなった。そこで、中枢性のSHIP2の制御がエネルギー代謝の改善に繋がることから、in silico ligand-based drug designの手法により新規SHIP2阻害化合物をデザインし、合成して得られた候補化合物の中から、培養細胞でのin vitroとマウスでのin vivoでの検討により、効果的にインスリン抵抗性病態での糖代謝を改善する新規SHIP2阻害化合物CPDAを見出した。さらに、強制水泳試験によるマウスのうつ状態の評価により、SHIP2阻害は抗うつ作用を発揮した。以上の本研究により、中枢性のSHIP2阻害は糖尿病や脳高次機能障害の改善に効果的なことが明らかとなり、今後の治療応用が期待される。
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