研究実績の概要 |
子宮平滑筋肉腫は頻度が低いながら一定の割合(0.13-0.39%)で発生しており、再発や転移、腫瘍死など個体の生命に重大な影響を及ぼしている。残念ながら、子宮平滑筋肉腫に対する治療法は完全には確立されていない。近年、様々な器官・組織に存在する固有の組織幹細胞が、それぞれの器官、組織の維持と再生を担っていることが明らかになってきた。さらに悪性腫瘍でも特異的な幹細胞マーカー(CD133, CD34, CD44)やABC transporterの色素選択性を利用したside populationが幹細胞の選択方法として広く活用されつつある。癌幹細胞は通常の癌細胞より強い抗癌剤耐性や放射線耐性を有するため、抗癌剤や放射線治療後の癌の再発の大きな原因と考えられている。現在まで、子宮平滑筋腫の幹細胞の単離とその解析は報告されていない。一方、悪性腫瘍:子宮平滑筋肉腫の幹細胞はその存在すら確定しておらず、無論、単離や解析も行われていない。そこで、正常子宮平滑筋細胞(NM)、子宮平滑筋腫(LM)、子宮平滑筋肉腫(LMS)の3種の幹細胞を単離して、各幹細胞の発現分子や機能の差異を検討することが目的である。まず、NM, LM, LMSの組織からのstem cell分画を多く含むと考えられるSP分画を分取した。NM,LM, LMSいずれの細胞種のSP分画は、多分化能を有し、低酸素環境増殖能が上昇しているため、幹細胞を多く含んでいるものと考えられた。以下の細胞種に対して比較遺伝子発現解析を行った。1.NMに対するLMの変化 2.NMに対するLMSの変化 3.LMに対するLMSの変化である。1ではER, PGR, SMA, calponinがわずかに低下した。2,3ではわずかに低下するものとしてER, PGR, SMA, calponin,MKI-67, Cyclin E があげられた。また、わずかに上昇するものとしてGlut-1, HKIIが挙げられ、今後、腫瘍組織での機能解析や治療効果判定に有用と考えられた。
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