研究課題/領域番号 |
23659779
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
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研究分担者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00452392)
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
磯部 晶 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397619)
橋本 香映 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 常位胎盤早期剥離 / 絨毛細胞 / 脱落膜細胞 / 低酸素刺激 / Eカドヘリン |
研究概要 |
本研究では、臨床検体から採取した絨毛細胞、脱落膜細胞、子宮筋細胞などを用いて、胎盤のIn vitro 再構築モデルを作成し、常位胎盤早期剥離の病態の解明に取り組んでいる。その第一段階として、絨毛膜細胞の初代培養に取り組んだ。具体的には、人工妊娠中絶術の際に排出される妊娠卵附属物を患者の同意のもと採取し、絨毛組織のみをPBS で充分洗浄した後にトリプシン処理を行い、培養皿に撒き付着細胞を回収した。この付着細胞が絨毛細胞であることを Cytokeratin-7 の免疫組織染色で確認した。常位胎盤早期剥離の直接の病因は現在まで全く不明なままである。我々は、何らかの刺激により、絨毛膜細胞層や脱落膜細胞層に細胞間間隙が発生することにより剥離が発生すると考えている。従って、細胞間の接着因子に着目している。常位胎盤早期剥離の原因の一つとして、詳細な病態は不明であるが、妊娠高血圧腎症などに伴う血管変化が考えられている。従って、低酸素刺激が絨毛膜細胞の細胞間接着因子に与える影響の解析を行った。具体的には初代培養絨毛膜細胞を1% 酸素下で 48 時間培養した後、RNA 及び蛋白を抽出した。いくつかの接着因子の検討を行い、代表的な細胞間接着因子である E カドヘリンの発現が著明に減少していることを確認した。さらに大阪府立母子医療センターが保有している妊娠高血圧腎症患者の胎盤の病理切片を用いて、絨毛膜細胞の E カドヘリンの免疫組織染色を行った。正常胎盤と比べて、絨毛膜と脱落膜の接合面での E カドヘリンの発現低下を認めた。妊娠高血圧腎症を発症した胎盤では血管変化によって、絨毛間腔がより低酸素環境になっていると考えられている。よって、このような環境下では絨毛膜細胞の細胞間接着因子 E カドヘリンの発現が減少し、細胞間が剥離しやすい状態になっていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では絨毛膜細胞の初代培養に成功し、上記に述べた成果を上げている。今後、脱落膜細胞も初代培養を樹立し、同様の実験を行う予定である。より精力的に本研究に更なるエフォートを注入し、研究期間内での研究遂行を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、絨毛膜細胞に続いて脱落膜細胞の初代培養を樹立する。樹立できれば、低酸素刺激、感染(リポ多糖投与)などの外的素因を加えて、細胞間接着因子がどう変動するかの網羅的解析を行う。解析は膜蛋白のみを回収して、iTRAQ 法で行う。iTRAQ 法に関しては大阪大学医学系研究科共同研に優れたスタッフと解析装置があり、それを用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、細胞培養用の培養液やディッシュ類や、遺伝子発現の解析に必要な抗体や測定用キットに多くの費用がかかることが見込まれる。それに加えて、実験用のマウスの購入も必要である。また、直接的な研究経費以外に、研究に関する情報収集、本研究を発表するための論文投稿費用も必要になってくる。
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