研究課題/領域番号 |
23659779
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
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研究分担者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00452392)
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
磯部 晶 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397619)
橋本 香映 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612078)
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キーワード | 常位胎盤早期剥離 / 前期破水 / インターロイキン / プロスタグランジン |
研究概要 |
本研究では常位胎盤早期剥離(以下、早剥)の病態の解明に取り組んでいる。早剥の原因の一つに前期破水、子宮内感染がある。前期破水は膣からの逆行性感染が羊膜などで起こり、そこで羊膜細胞からサイトカインが分泌され、マクロファージなどの炎症性細胞の誘導し、炎症性細胞がマトリックス分解酵素などを分泌することにより発生すると考えられる。そこで、本年度は実際に絨毛羊膜炎があった胎盤の臨床検体を用いて、様々なサイトカインの発現を検討した。絨毛羊膜炎があった胎盤は大阪府立母子医療センターとの共同研究で同センターが保管している胎盤の組織切片を利用した。様々なサイトカインの免疫組織染色を行い、代表的な炎症性サイトカインであるインターロイキン6(以下IL-6 )が、絨毛膜細胞および絨毛内の間質で強く発現していることを確認した。続いて、羊膜を予定帝王切開時に無菌的に採取。細切した後に酵素処理をして、羊膜上皮細胞の初代培養を行い、それに成功した。上皮細胞であることはCytokeratin-7 の免疫染色で確認した。その羊膜細胞にIn Vitro でIL-6 を添加したところ、羊膜細胞におけるアラキドン酸代謝経路の重要酵素であるシクロオキシゲナーゼ2の発現が増加し、培養上清中のプロスタグランジンE2 の上昇を確認した。早剝がおこった際には必ず強い子宮収縮を伴っており、子宮において種々のプロスタグランジンが豊富に存在していると考えられている。今回の検討では、子宮内感染に伴い、絨毛や脱落膜などでIL-6 が産生され、それが羊膜細胞におけるプロスタグランジンE2の産生につながっていることとの仮説を検証するに至った。即ち、前期破水に伴う早剝発生における子宮収縮の原因解明につながる基礎データを創出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では早剥の発生原因について、感染に焦点を当てて行ってきた。計画に記載したように大阪府立母子医療センターとの共同研究による免疫組織染色も順調に進行し、絨毛羊膜炎胎盤におけるサイトカインの局在を確認することができた。また、In Vitro の実験において、初代培養の確立を羊膜細胞において確立した。それにIL-6 を添加することにより、上清を用いたELISA 法によるプロスタグランジンの産生増加も確認した。このように一定の成果を創出しており、研究はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、IL-6 が子宮収縮の鍵となる分子の一つであると考える。従って、IL-6 の受容体抗体を用いて、まずはIn vitro の実験系で受容体抗体がプロスタグランジンの産生を抑制するかどうかの実験を行う。それと並行して動物実験を行う。C3H/HeN 雌マウスとB6D2F1 雄マウスを掛け合わせると、低用量の大腸菌成分であるリポ多糖投与により胎盤が剥離して早産が誘発される。よって、この実験モデルを利用して、IL-6 受容体抗体が胎盤剥離を抑制するかどうかの検討を行う。さらにその作用点の検討として、リポ多糖投与後にマウスを開腹して、羊膜を採取し羊膜におけるシクロオキシゲナーゼ2の発現を検討する。それにより、IL-6受容体抗体の作用点を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は動物実験を中心に検討を行う。従って、研究費の多くをマウスの購入費、維持費に用いる。また、本年度に引き続いて、初代培養に用いる酵素、培地類の消耗品が必要である。残る研究費はそれら消耗品の購入に用いる。
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