研究課題/領域番号 |
23659781
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
杉野 法広 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10263782)
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研究分担者 |
村上 明弘 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (70379965)
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キーワード | 皮膚 / SCC / カルシウム / 扁平上皮細胞 / カドヘリン / インボルクリン |
研究概要 |
1.正常扁平上皮細胞において、細胞外カルシウム濃度変化に伴う細胞分化と細胞接着因子発現の変化およびSCC 発現変化を検討する目的で、ヒトケラチノサイトを無血清培地で培養し、培養液中のCa濃度を0、0.01、0.1、1.0 mMに調整し、下記の項目を検討した。 ①細胞形態と細胞動態について:コントロールでは細胞の大きさは小型で増殖は遅く、細胞間の接着は粗であったが、Ca濃度の増加により細胞間は近接する傾向にあり、特に1.0mMでは細胞同士が密着し、一部重層化を認めた。②胞内のSCCAタンパク発現について:コントロールではSCCA発現は低発現であったが、0.01mM以上でSCCAの発現上昇を認めた。③平上皮の分化マーカーであるインボルクリンのタンパク発現について:コントロールでは低発現であったが、0.01mM以上で発現上昇を認めた。④E-カドヘリンのタンパク発現について:コントロールではE-カドヘリンの発現を認めなかったが、0.01 mM以上でE-カドヘリンの発現を認めた。 2.細胞外カルシウム濃度の増加にともなう細胞分化と細胞間接着因子の増加が、SCC抗原の細胞内発現の低下によって影響うけるかを調べた。SCC抗原の発現抑制を目的として、安定的な発現抑制が得られるようにSCC抗原のアンチセンスcDNAを遺伝子導入することを試みた。しかしながら、リポフェクチン法による遺伝子導入後の薬剤によるセレクションでprimary cellであるケラチノサイトは、SCC抗原のアンチセンスcDNAの遺伝子導入が困難であり、安定株を得られていない。また、SCC抗原の安定的過剰発現のために、SCC抗原のセンスcDNAを遺伝子導入も試みたが、同様の結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23-24年度の研究計画である「正常扁平上皮細胞において、細胞外カルシウム濃度変化に伴う細胞分化と細胞接着因子の発現の変化、およびそれに関わるSCC 抗原の役割を明らかにする。」について、研究成果を得ている。また、「細胞外カルシウム濃度の増加にともなう細胞分化と細胞間接着因子の増加が、SCC抗原の細胞内発現の低下によって影響うけるかを調べる。」については、実際の実験に取り掛かり、その結果から次年度に向けた実験計画を立てることにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 「細胞外カルシウム濃度の増加にともなう細胞分化と細胞間接着因子の増加が、SCC抗原の細胞内発現の低下によって影響うけるかを調べる。」について、次年度は、SCC 抗原の発現を抑制するために SiRNA法によってSCC抗原遺伝子のノックダウンを行う。この細胞を用いて、細胞外カルシウム濃度の増加にともなう細胞分化と細胞間接着因子の発現を検討する。または、レンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入で再検討を試みる。 2. 「SCC抗原に扁平上皮細胞の角化抑制作用と、実際に皮膚層構造の肥厚促進作用があるかを明らかにする。」の準備実験に取り掛かる。ヒトケラチノサイトによって構成された皮膚3次元モデル(EP1-100, KURABO Co. Ltd)を確立する。このモデルは、基底層から顆粒層まで8~12層を形成している他、角質層も有している。層構造の形態学的な変化や構成細胞の形態を観察する。特に、角質層の厚さと、有棘層から顆粒層の厚さを測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.細胞培養実験に係わる経費。 2.ヒトケラチノサイトによって構成された皮膚3次元培養モデルの購入とその培養実験経費。 3.当該年度の研究費に未使用額が生じた理由は、計画どおりに行った実験からの成果を踏まえて、追加の実験を優先して行う必要が生じたため、皮膚3次元培養モデル実験の取り掛かりが次年度に変更になったためである。 4.未使用額は、SiRNA法によるSCC抗原遺伝子のノックダウン実験、レンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入実験、皮膚3次元培養モデル実験にあてる。
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