研究概要 |
本研究では、ヒトの子宮内膜および子宮筋などの幹細胞の表面マーカーならびに分泌蛋白を同定し、これらを指標にして、ヒト雌性生殖器官の成体幹細胞の特性と機能を明らかにすることを目的とする。そのためにシグナルシークエンストラップ法(SST-REX法)を用いる戦略とした。その出発材料となる幹細胞と非幹細胞を明確に異なる集団として分離されることが本研究の成否を決するため、本年度は、幹細胞特性をin vivoで確認するシステムの確立を目指した。これまでの子宮内膜再構成モデル(Masuda, et al., PNAS, 2007)をさらに改善していくとともに、内膜幹細胞(Masuda, et al., PLoS ONE, 2010)のみをマーキングし非幹細胞とともに移植することで、幹細胞が内膜の各細胞成分(腺上皮、間質、血管など)へどのように分化していくかを解析した。これまでの再構成系は移植部位であるマウス腎臓を穿通させて行っていたが、極めて高度の技術を要し困難を極めた。そこで、本年度は穿通させずに移植する方法の開発に着手し、その技術を確立し得た。続いて、内膜幹細胞の候補集団である内膜SP細胞および非内膜幹細胞(内膜non-SP)にそれぞれマーカー遺伝子を導入して標識した。これらを、非標識内膜細胞と混在させて、重度免疫不全マウスの腎被膜下に移植し内膜再構成を行った。その結果、標識SP細胞の移植によって再構築された内膜では、標識蛋白陽性細胞が内膜の各構成細胞(腺上皮、血管内皮、間質など)に認められたが、標識内膜non-SP細胞の移植によって再構築された内膜では、標識細胞は腺上皮や血管内皮には存在せず、主に間質のみにしか認められなかった。以上より、内膜SP細胞はin vivo多分化能を有する真の幹細胞であることが確認され、次年度に向けてのSST-REX法に供し得るマテリアルを確保し得た。
|