研究課題/領域番号 |
23659787
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
江本 精 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (80258540)
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キーワード | 癌幹細胞 / 血管新生 / 子宮癌肉腫 / 子宮肉腫 / VEGF / Angiopoietin / 超音波 |
研究概要 |
我々は婦人科がんの中でも最も未分化であり且つ多分化能を有するミューラー管悪性腫瘍に注目し、がん幹細胞の追求を行ってきた(Emoto; Cancer 1993, Virchow arch 1997)。本腫瘍はがん肉腫であり、以前から幹細胞腫瘍(Stem Cell Malignancy)ではないかと推察されていた極めて悪性度が高く予後不良な腫瘍である。また、我々は本腫瘍の血管新生が他の婦人科がんと比較して極めて高度であることも初めて報告し新たな治療戦略を提案してきた(Emoto; Hum Pathol 1999, Gynecol Oncol 2003, Cancer Sci 2007, Cancer Sci 2010)。従って、本腫瘍の幹細胞研究において新たな知見を2013年英国にて開催されたIGCS国際学会において報告した(Emoto, M, Batsuren C)。CD133は幹細胞マーカーの一つと考えられており、神経幹細胞に発現が認められている表面抗原である。我々が樹立したミューラー管悪性腫瘍株であるFU-MMT-1(Emoto; Cancer 1992)におけるCD133陽性細胞集団の性状について解析した結果、CD133陰性細胞集団と比較して有意に高い細胞塊形成能、増殖能、コロニー形成能、異種移植能を認めた。FU-MMT-1-CD133陽性集団は子宮癌肉腫において、初めての癌幹細胞である可能性が極めて高いことが判明し、本年度はその血管新生能について更に追求した。その結果、本細胞集団は高度のVEGF産生能や血管新生能を有することが確認され、現在mRNAの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、子宮癌肉腫において、がん幹細胞に係る重要な遺伝子とされるOCT4, NANOG, SOX2, C-MYC及びBMI-1等の遺伝子発現をミューラー管腫瘍において明らかに成りつつある。これらの遺伝子と幹細胞マーカーとされるCD133やCD44, CD29, CD90等との密接な関連も解明されつつある。。さらに、子宮発生の源である胎生期ミューラー管形成に関与するPAX2やWNT4遺伝子発現についても予測に近いデータが得られており、FU-MMT-1-CD133陽性細胞集団がミューラー管起源であるかどうかを確認できている。残るは、これらの細胞集団におけるmRNAの発現と上記遺伝子の発現解析の進捗状況がやや遅れているが、これはmRNAの発現レベルをどのように評価するかという点にかかっており、来年度中により明らかになると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
がん幹細胞に係る重要な遺伝子とされるOCT4, NANOG, SOX2, C-MYC及びBMI-1と幹細胞マーカーとされるCD133やCD44, CD29, CD90等遺伝子を対象としてmRNAの発現を調べる。さらに、胎生期ミューラー管形成に関与するPAX2やWNT4遺伝子とmRNAの発現レベルについて、比較規定値をいくつか設定して因果関係を調べる予定である。これらの関連が明らかに成ってくるとmRNAを用いた画期的ながん治療のエポックが出てくる可能性を秘めている。今後はそのようなmRNA治療を中心に子宮癌肉腫幹細胞の研究を推進して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本課題において主要な解析項目の一つであるmRNAの解析がまだ十分に成されなかったため、次年度使用額が発生した。その理由としてmRNAの解析は定量的評価が必要であり、その設定がかなりsensitiveな要素が含まれているからである。複数回の解析的アプローチが必要となるため、次年度まで持ち越すことと成った。また、それによる成果発表等も次年度以降に一部移行する形になる。 FU-MMT-1-CD133細胞集団を用いたがん幹細胞に関するmRNAに関する解析費用とそれに伴う人件費および学会出張、共同研究のミーティングが主体となる。以下に項目別にその概算を示す。 1)mRNA解析に関する試薬等:30万円、2)mRNA解析に関する人件費:20万円、3)国際学会および国内学会にて成果発表に係る費用:50万円、4)学会参加費:10万円、5)共同研究に係るミーティングにおける出張費:20万円
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