研究課題
申請者らは、受精における精子と卵の融合を制御する卵側因子として膜4回貫通型タンパク質CD9を主な構成成分とする膜構造体(exosome, エキソソーム)が必須であることを明らかにしてきた(Miyado et al., PNAS, 2008)。さらに最近のわれわれの研究から、CD9を含むエキソソームは、卵ばかりでなく、マウスおよびヒトの子宮内にも存在することがわかってきた。そこで本研究では、卵管から子宮内に存在するCD9を含むエキソソームの生理機能、特に、"子宮上皮の再生"における役割について研究を行っている。子宮の機能異常については、CD9欠損マウスに卵特異的にCD9-GFPの融合タンパク質を発現するトランスジーンを導入したマウス(CD9-/-TGマウス)を用いて解析を行った。現在までに、CD9-/-TG雌マウスの産仔数が、野生型マウスと異なり、出産回数にともなって減少することを見出している。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度に行った解析の結果、CD9-/-TG雌マウスの出産回数にともなった産仔数の減少は、子宮上皮細胞の再生が遅延していることに起因していることを形態学的に明らかにした。更に、細胞接着因子であるインテグリンα6およびE-カドヘリンのCD9-/-TG雌マウスの子宮上皮細胞における局在は、野生型マウスと同様であったのに対して、CD98の局在には異常が認められた。更に、子宮内液における液性因子の定量を20因子について行ったところ、VEGFを含む8因子について発現の低下が認められた。
平成23年度の研究を継続するとともに、新たなエキソソームの解明に関する実験系を立ち上げる。エキソソームを分泌する細胞を特定する目的で、組織を3つの領域に分割し、ウエスタンブロット解析により、各領域に含まれるCD9の蛋白質量を定量することで、エキソソームの存在量を推定する。更に、トリプシン処理によって組織を細分化して初代培養することによりエキソソームを分泌する細胞を同定する。
平成24年3月31日現在で発生していた残額については、既に3月中に支払い予定が確定しているため、24年度中に使用する予定はない。当初の交付申請通りの研究費にて研究資材、研究試薬、実験動物を購入予定である。
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