研究課題/領域番号 |
23659790
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田 仁 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111264)
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研究分担者 |
村越 道生 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70570901)
小山 眞 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10465487)
小林 俊光 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80133958)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 耳科学 |
研究概要 |
我々の聴覚は外有毛細胞の伸縮運動により鋭敏なものになっている.その伸縮は,細胞側壁に存在する直径10 nm 程度のタンパク質モーターprestin(プレスチン) が変形し,大きい状態と小さい状態の2状態をとることに起因すると推定されている.本研究では,膜電位コントロールデバイスを備えたAFMを新規に開発し,世界に先駆けてプレスチンの変形挙動を可視化することを試みる.これによりプレスチンの動作メカニズム解明に向けたブレークスルーの創起を狙う. 本年度は,脂質膜に再構成されたプレスチンのサイズ変化を誘起できる膜電位コントロールデバイスの開発に取り組んだ.膜電位コントロールデバイスはパイレックスガラス製のチャンバーと,試料をのせるテフロン製基板から構成される.チャンバーはAFMに組み込むことが可能なように,直径12 mm,高さ4 mmの円筒形状とし,中央には細胞外溶液を溜める窪み(直径5 mm,深さ3 mm)を設けた.基板は,テフロンの電気特性を考慮し,厚みを約30 μmとし,その中央に直径約2 μmの微小ポアを作製した.作製したデバイスを評価するため,テフロン基板の電気特性(抵抗特性及び容量特性)を計測した結果,材料物性及び形状から算出される理論値と計測値が一致し,設計通りにデバイスが作製できたことが明らかとなった.今後,人工脂質膜をテフロン基板上に作製し,その電気特性を評価する計画である.さらにこの人工脂質膜に精製したプレスチンを再構成することで,プレスチンのサイズ変化を誘起し,AFMによるプレスチンの変形挙動の観察に取り組む予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年3月11日の東日本大震災及び関連する余震によって,本研究の中核を担うAFMが被災し使用不可能となった.またその他実験設備・試薬等に関しても多大な被害を受けた.早期復旧に取り組んできたものの,AFMに関しては,復旧に約10カ月を要した.このような状況のため,本年度の計画のうち,膜電位コントロールデバイスの開発についてはほぼ計画通りに進んだものの,精製プレスチンの脂質膜への再構成については実施が遅れている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
実施が遅れている精製プレスチンの脂質膜への再構成に関する実験を早期に開始するとともに,実施計画の見直しを行う.具体的には,平成24年度に計画していたイオン組成がプレスチンの変形に与える影響の調査について,調査対象とする化合物を,プレスチンの構造変化に顕著な影響を及ぼすと考えられるサリチル酸(プレスチンのアンタゴニスト)に限定することを検討している.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の約60%を実験に必要な消耗品の購入に充て,残りを研究成果発表および論文投稿等に使用する予定である. また,今年度未使用分(次年度使用額)は,当初計画していた精製プレスチンの脂質膜への再構成を次年度に延期することによって生じたものであり,平成24年度請求額とあわせて使用する予定である.
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