研究課題
本研究は乳酸菌そのもの、あるいは乳酸菌をベクターとして用いた新しい進行癌の局所治療、全身療法を開発するのが目的であり、これは特に頭頸部癌の最大の特徴である視・触診可能な範囲にあるという点を最大限に利用して、進行癌に対する安全で強力な治療法の確立をめざすものである。用いたのはヒト頭頸部扁平上皮癌の細胞株(SAS、HSC2、HSQ89、RPMI2650)で、ヌードマウス側背部皮下に移植した。腫瘍体積が目的の大きさに達したところで、腫瘍体積がほぼ均等になるように3-4匹ずつ3群に分け、乳酸菌組換え体(以下IL-2(+)菌)注入群、乳酸菌非組換え体(以下IL-2(-)菌)注入群、対照群とした。乳酸菌は5日間連続投与実験では1回あたり1.0×108cfuを注入し、対照群にはPBSを注入し、腫瘍の大きさを計時的に測定した。乳酸菌の培養はまずMRS寒天平板培地を用いて画線培養、その後の培養はアネロパウチ・ケンキと専用バウチ袋を用いて、嫌気下37℃で行った。腫瘍抑制効果を認めたのはHSC2、SASの2株でHSC2ではIL-2(+)菌、IL-2(-)菌の両者で、SASではIL-2(+)菌で有意に腫瘍抑制効果を認めた。この結果は複数の実験で確かめられた。HSC2ではIL-2(+)菌注入群で22日目に腫瘍が消失した個体を認めた。腫瘍抑制効果の得られた乳酸菌および組換え体乳酸菌局所注入ヌードマウスの血清中でTNFα、IL12などのインターロイキンが大幅に増加していることが明らかとなり、Th1型の免疫誘導を行うことが予想された。今後、これらの腫瘍免疫が誘導される物質の同定を検討する。短期実験についで長期実験を行ったが、IL-2(+)菌で腫瘍抑制効果を認めたものの、生存率では有意差を認めなかった。これは長期になると腫瘍の大きさそのものより、歩行ができるかどうかなどの要因が関与してくるためと思われた。
すべて 2013
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Oncology
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