研究課題
Sall1ノックアウトマウスは腎臓が無形成であるが、胚盤胞補完により正常な腎臓が形成されることが報告されている。内耳の発生に重要な役割を果たすPax2やSix1が、Sall1に影響を受けることから、Sall1ノックアウトマウスで内耳の無形成が予想された。そこで、このSall1ノックアウトマウスにおいて、内耳の胚盤胞補完を試みた。先ず、Sall1ノックアウトマウスの内耳形態を評価したところ、予想に反し、Sall1ノックアウトマウスの内耳は肉眼形態では正常であり、HE染色による蝸牛形態の評価、各種有毛細胞マーカーによる免疫組織化学での評価、さらにWhole-mountでの組織評価においても、正常なコルチ器の形成が確認され、Sall1ノックアウトマウスの内耳は、ほぼ正常に形成されていることがわかった。次に、すでに内耳の欠損が報告されているPax2ノックアウトマウス、Six1ノックアウトマウスにおいて、胚盤胞補完を試みた。注入にはGFP発現株のES細胞を用い、細胞の系譜が確認できるようにした。現在までに、ES細胞を注入した胚盤胞から、いくつか、内耳形成が見られる個体を得たが、GFP陽性の内耳を確認することはできず、このノックアウトマウス群では、導入ES細胞由来の胚盤胞補完を確認できなかった。この結果の原因としては、注入されたES細胞から、何らかの液性因子が分泌されPax2、Six1の表現系をレスキューしている可能性が考えられる。現在、Septin-7ノックアウトマウスが内耳欠損の表現系を示すことを我々は見出し、このマウスでの解析を進めている。
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