研究課題/領域番号 |
23659795
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
丹生 健一 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20251283)
|
研究分担者 |
大月 直樹 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40343264)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 頭頸部癌 / 腫瘍マーカー / メタボローム解析 / バイオマーカー / 代謝産物 |
研究概要 |
前立腺のPSAに代表されるように、担癌患者の血液中には様々な癌種特異的腫瘍マーカーが検出さる。抗癌剤や放射線治療、手術などの治療により、マーカー値が低下し、治療効果や再発の早期発見の指標として用いられている。頭頸部癌患者においてもSCC抗原やp53抗体など、いくつかのマーカー候補因子が同定されているが、陽性率が低く早期癌では陰性のことが多いため、腫瘍マーカーとしての実用性は乏しい。 本研究では、頭頸部癌の早期発見や治療効果判定、再発の発見につながる腫瘍マーカー探索を目的とし、頭頸部癌患者の手術前後の血液および腫瘍組織を用いたメタボローム解析を行った。頭頸部癌患者17人の血清と19人の腫瘍組織をメタボローム解析したところ、血清からのメタボローム解析では、112種類の代謝産物を同定することができ、うち9種類は再発患者に特異的であった。一方、腫瘍組織を用いたメタボローム解析では、109種類の代謝産物が同定された。そのうち41種類については、正常組織と比較して腫瘍細胞に優位に増加し、15種類の代謝産物は減少していることが明らかになった。また、口腔癌に限定すると、32種類の代謝物が増加し、7種類が優位に減少していることが明らかになった。これらの結果から、メタボローム解析は、腫瘍マーカー探索に有用な実験方法であること、腫瘍特異的に詳細な差異を見出すことにより、癌種ごとの判断に有効な腫瘍マーカー発見が可能であることを示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタボローム解析では、同時に多くのサンプルを準備し、比較検討することが重要である。本研究では、短期間のうちに、計35人の担癌患者から血清と腫瘍組織、また周辺の正常組織試料を順当に得ることができ、一度に解析を行うことで、より信憑性の高い確実なデータを得ることができた。そして、担癌患者の血清や腫瘍組織特異的な代謝産物が存在することを明らかにできた。また腫瘍部位ごとに代謝産物が異なる可能性を示すこともできた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究成果では、1)メタボローム解析は腫瘍マーカー発見に有効であること、2)担癌患者の血液および腫瘍組織特異的な代謝産物が存在すること、3)癌種ごと代謝産物の増減に違いがあり、腫瘍ごとのマーカー探索が可能なことを明らかにすることができた。今後も引き続き、患者からのサンプリングを行い、頭頸部癌にカテゴライズされる、口腔、中咽頭、下咽頭、咽頭の癌種ごとの特異的な代謝産物の探索および癌の進行ステージの違いによる代謝産物の増減の違いなど、より詳細で多様な実験系を組むことで、腫瘍マーカーやバイオマーカー探索をひきつづき行いたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は1)患者からのサンプリングを行い、2)頭頸部癌にカテゴライズされる、口腔、中咽頭、下咽頭、咽頭の癌種ごとの特異的な代謝産物の探索および癌の進行ステージの違いによる代謝産物の増減の違いを解析する、3)研究成果を学術雑誌、学会にて発表する以上に対して研究費を使用する予定である
|