本研究では、頭頸部癌の早期発見や治療効果判定、再発の発見につながる腫瘍マーカー探索を目的とし、頭頸部癌患者の手術前後の血液および腫瘍組織を用いたメタボローム解析を行った。頭頸部癌患者17人の血清と19人の腫瘍組織をメタボローム解析したところ、血清からのメタボローム解析では、112種類の代謝産物を同定することができ、うち9種類は再発患者に特異的であった。一方、腫瘍組織を用いたメタボローム解析では、109種類の代謝産物が同定された。そのうち41種類については、正常組織と比較して腫瘍細胞に優位に増加し、15種類の代謝産物は減少していることが明らかになった。また、口腔癌に限定すると、32種類の代謝物が増加し、7種類が優位に減少していることが明らかになった。これらの結果から、メタボローム解析は、腫瘍マーカー探索に有用な実験方法であること、腫瘍特異的に詳細な差異を見出すことにより、癌種ごとの判断に有効な腫瘍マーカー発見が可能であることを示すことができた。Pathway解析では、頭頸部癌患者の血清では解糖系が高く、アミノ酸系が低い。腫瘍組織内では解糖系が低くく、アミノ酸系が高い傾向がみられた。今後も引き続き、患者からのサンプリングを行い、頭頸部癌にカテゴライズされる、口腔、中咽頭、下咽頭、咽頭の癌種ごとの特異的な代謝産物の探索および癌の進行ステージの違いによる代謝産物の増減の違いなど、より詳細で多様な実験系を組むことで、腫瘍マーカーやバイオマーカー探索をひきつづき行いたい。
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