研究課題/領域番号 |
23659796
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
川内 秀之 島根大学, 医学部, 教授 (50161279)
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研究分担者 |
森倉 一朗 島根大学, 医学部, 助教 (00362939)
青井 典明 島根大学, 医学部, 講師 (80452556)
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / スギ花粉症 / スギ花粉症治療米 / 舌下免疫療法 / 調節性T細胞 / IgE抗体 / CTB |
研究概要 |
アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の有用性とその機序を明らかにするため、卵白アルブミン(OVA)を抗原に用いたアレルギー性鼻炎のモデルマウスにおいて、抗原提示細胞および制御性T細胞の機能・動態について解析を行った。全身感作前におけるOVAの舌下投与群では、対照群に比べ、鼻粘膜局所感作の際の反応相での鼻症状(くしゃみや鼻掻き)が有意に抑制された。OVAを舌下投与したマウスにおいては、血清中のOVA特異的IgE抗体価が、対照群に比べ、有意に低下していた。同時に頸部リンパ節由来のリンパ球からのTh2サイトカイン産生が有意に抑制された。これらのリンパ節ではflow cytometryによるCD4+CD25+Foxp3+T細胞数の増加は認めないものの、本細胞群のmRNAレベルでのIL-10 特異的な遺伝子発現の増強が認められた。 ②マウススギ花粉症モデルでのスギ花粉症治療米の舌下投与の有効性とその機序に関する検討:マウスのスギ花粉抗原に対するT細胞エピトープである3C7Cを用いて用量設定試験を行った。花粉症モデルの全身感作前に、3C7Cでは、200mg/ml,100mg/mlの濃度で4μlの1週間間隔で3回の舌下投与を行い、スギ花粉抗原の鼻粘膜局所投与による反応相でのくしゃみ、鼻掻きなどの鼻症状発現の抑制効果が認められたが、50mg/mlの濃度では抑制効果を認めず、舌下投与におけるT細胞エピトープの容量依存性を確認した。さらに治療米を投与したマウスでは、血清中のスギ花粉特異的IgEが対照群に比べ、有意に低下していた。コレラトキシンβサブユニット(CTB)を結合したCTB-Crpの舌下投与の場合は、通常のT細胞エピトープを用いる場合より10分の1の濃度(10mg/ml)で、鼻症状の抑制効果が認められた。以上の結果より、舌下免疫療法の有効性とその機序を証明し得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であった、スギ花粉症治療米の舌下投与による鼻症状の抑制効果について、容量依存性を確認することができた。CTBを結合したT細胞エピトープを用いて、より少量のスギ花粉症治療米の舌下投与で、鼻症状の発現を抑制することができた。さらに、OVAを用いた実験系において、鼻症状を顕著に発現させることに成功し、抑制効果のメカニズムの解析に拍車がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
①さらに舌下免疫療法のメカニズムの解析と局所感作成立後の舌下免疫療法の有効性の確認を詳細に行う実験を行う。 ②調節性T細胞の誘導にかかわる樹状細胞とケモカイン受容体の役割を検討するため、ケモカイン受容体に対するリガンドの欠損した遺伝子変異マウスを用いて実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究用試薬(ELISA,RT-PCRなど)、ならびに実験に使用する野生型マウスの購入費、遺伝子変異マウスの作成、維持、飼育に、研究費を使用する。 H24年度の研究経費で13813円の未使用の金額が発生した理由は、今年度内に予定していた動物実験が予定どうり施行できなかったため、解析用の試薬の購入金額に誤差が生じたためである。平成25年度になり、行われている動物時実験の解析に使用させていただく予定である。
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