研究課題/領域番号 |
23659802
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
加我 君孝 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター(政策医療企画研究部), 名誉センター長 (80082238)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 臨床 |
研究概要 |
両耳聴力について、両側高度難聴者に対して、補聴器と人工内耳の左右耳の組み合わせを、(1)両側気導補聴器、(2)片側気導補聴器vs反対側人工内耳、(3)両側人工内耳に分けて、a.両耳時間差認知能力、b.両耳音圧差認知能力、c.時間差・音圧差取引について成立するか否かを研究した。本年度はRION社製の自動方向感検査装置を用いた。さらに言語音の認知を、a.単音節、b.単語、c.文章に分けて単耳聴と両耳聴のそれぞれに分けて、その能力を評価した。その結果、(1)両側気導補聴器症例は両耳時間差も音圧差も時間差・音圧差取引も成立することがわかった。語音認知も片耳より両耳の方が向上することがわかった。(2)片耳気導補聴器、反対側人工内耳症例では、3つの検査法のうち、両耳音圧差だけで成立することがわかった。ただし、語音の認知は単音節も単語も文章も両耳聴の方が向上した。(3)両耳人工内耳症例でも3つの検査法のうち、両耳音圧差のみ成立した。語音の認知は単音節も単語も文章も両耳人工内耳では必ずしも向上しないことがわかった。本年度の研究の結果、人工内耳による両耳聴は両耳時間差よりも両耳音圧差によって成立することがわかった。すなわち、人工内耳は蝸牛神経を刺激するものであるが、蝸牛神経のすべてを刺激するものではなく、人工内耳装用者にとっては部分的な蝸牛神経障害とみなすことができよう。補聴器だけの装用では両耳時間差の能力が保たれるのに対し、人工内耳では片耳装用でも両耳装用でもそのようにはならないことが今回世界に先駆けて証明することができた。補聴器と人工内耳の組み合わせで、なぜ語音認知が向上するかその機序の証明は次年度の研究目標である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はRION社製の自動方向感検査を用いたため限界があった。近く新しい両耳聴の測定装置を使える見込みであり、より正確な両耳聴検査が可能な見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
人工内耳患者については、術前の(1)裸耳、(2)両耳気導補聴器下に方向感が成立するか調べる。術後の(3)片耳補聴器、反対側人工内耳装用、(4)両耳人工内耳装用についても方向感が成立するか調べることで、人工内耳下の両耳聴の中枢機序をさらに解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を発表するための学会への参加費並びに旅費、検査に必要な消耗品等で使用する予定である。
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