研究課題/領域番号 |
23659803
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
木ノ内 玲子 旭川医科大学, 医学部, 特任准教授 (70344562)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Vogt-小柳ー原田病 |
研究概要 |
急性期原田病17人とその治療後9人の末梢血の解析が進んでいる。 急性期原田病患者の末梢血中CD4陽性T細胞からmRNAを抽出し、逆転写反応後cDNAをテンプレートとして29種類のVβ特異的プライマーを用いたPCR法により、Genescanで特徴のある増加パターンを示すVβ鎖遺伝子を検出した。このVβ遺伝子を発現するCD4陽性T細胞レパートリー内に、CDR3領域の特異性(クロノタイプ)で頻度の高いクローンAが見つかった。このクローンAは、17人中15人のCD4陽性T細胞レパートリーに存在していたが、治療後9人の患者では検出されなかった。 これまで抗原特異的T細胞を解析するには、in vitroで抗原刺激し,増殖したT細胞cloneやT細胞株を樹立して解析する手法が用いられてきた。この方法では人為的に抗原刺激の操作が加わる事で、この条件で増殖しやすいT細胞のみの解析となり、疾患の病因となる抗原特異的T細胞の検出には適さない面がある。今回、抗原刺激などの操作を加えず、原田病急性期患者の末梢血中CD4陽性T細胞からmRNAを抽出し、GenescanによるCDR3クロノタイプを解析することで、増加しているクローンAが見つかった。このクローンは治療後に検出されなくなり、原田病発症に関わる抗原特異的ヘルパーT細胞であることが示唆される。 今後、この結果は原田病の診断法・発症機転解明につなげられる。また、特定の免疫疾患で増えているT細胞クローンの検出方法として応用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性期原田病患者17人とその治療後の患者9人の末梢血CD4陽性ヘルパーT細胞のT細胞クロノタイプを比較検討することにより、発症直後に患者間で共有する同一T細胞Vβ鎖CDR3構造を有するクローンAを見つけた。 患者によるクローンAの出現頻度を調べることで原田病の診断法の確立をはかることができ、クローンAの認識する抗原を調べることで原田病発症機転の研究に進展できる。
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今後の研究の推進方策 |
今回検出したクローンAのT細胞受容体を有するCD4陽性T細胞をin vitroで培養し、その抗原特異性、Vα鎖を確定する。このT細胞クローンよりRNAを抽出し、T細胞に対するマイクロアレイを用いて疾患特異的発現遺伝子を選別する。 同定したVα鎖、Vβ鎖を発現ベクターに構成し、TCRネガティブT細胞株(Jurkat-)に導入する。この細胞株に対して、ランダムペプチドライブラリーまたはメラノサイト特異的抗原ライブラリーを用いたスクリーニングで、反応する抗原ペプチドを同定する。さらにHLAクラスII拘束分子、サイトカイン産生能を検討し、疾患形成との関連を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
疾患感受性T細胞について、その特異性に基づき、発症に関与する他の因子を同定することに重点を置く。サイトカイン産生能の解析では、ELISPOTアッセイまたは、ELISA法で検出する。細胞内シグナル、情報伝達系因子の発現解析には、マイクロアレイ法で検出する。その他、in vitro培養系でT細胞の増殖活性、細胞表面分子解析には蛍光抗体を使用しフローサイトメーターで解析する。
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