研究概要 |
網膜視細胞疾患に対する遺伝子治療、再生治療の可能性が追求されている昨今、視細胞再生に関して前提となっていることとして正常な網膜色素上皮(RPE)が維持されている事があるが、これまでには検討されてこなかった。 我々は視細胞に原因のある網膜色素変性マウス(rd1/rd1)を用いてRPEの形質が正常に保たれているのかどうか、あるいは上皮間葉移行(EMT)が起こっているではないかという仮説のもとに研究を行った。 結果、rd1/rd1マウスでは視細胞が失われた後、徐々にαSMA,vimentinといったmesenchymal markerの発現の上昇をmRNAレベルで確認した。しかし一方で、RPE特異的に発現しているRPE65や、E-cadherinといったepithelial markerはmRNAレベル、さらに蛋白レベル(western blottingにて確認)でもやや発現の上昇を認めた。ZO-1については組織免疫学的検討を行い、発現はある程度維持されているものの、発現部位の異常とRPE細胞の形態異常を確認した。 現在、EMTの制御に重要と考えられているTGF-βの発現について検討を行っているところであるが、いずれにせよ、視細胞が失われている網膜変性においては、RPEの形質にも変化が起こっている可能性が確認された。このことは将来的に網膜再生研究において考慮されるべき点と考えられる。
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