研究課題/領域番号 |
23659810
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小泉 修一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (10280752)
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研究分担者 |
柏木 賢治 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (30194723)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | RGC / ミューラー細胞 / アストロサイト / ATP / P2受容体 / 突起伸展 |
研究概要 |
眼圧亢進に依存しない「正常眼圧緑内障」の分子病態を、グリア細胞の視点から明らかとすべく、検討を行った。視神経グリア細胞又はミューラー細胞と、神経節細胞(RGC)を、トランスウェルの上下に接触しないような条件で播種し、グリア細胞の有無が、RGCの突起伸展に与える影響を検討した。RGCは、グリア細胞の存在により、その突起伸展が、著しく亢進した。また、両者は接触していないことから、グリア細胞の放出する液性因子が、RGCの突起伸展を引き起こしている可能性が示唆された。グリア細胞は「グリア伝達物質」と呼ばれる液性因子を放出し、自身及び近傍の細胞とコミュニケーションを取っていることが知られている。特にATPは脳でもレチナでも中心的なグリア伝達物質である。そこで、先ず最初にRGCの突起伸展における、ATP及びP2受容体の関与の検討を行った。ATP刺激を毎日繰り返すことにより、RGCは有意にその突起を伸展させたが、ATPアナログのUTPではその作用は認められなかった。P2受容体拮抗薬suraminにより、ATPによる突起伸展作用は抑制されたことから、ある種のP2受容体を介して、RGCは突起を伸展させている可能性が示唆された。また、細胞内シグナルとして、Aktが重要な役割を果たしていることが明らかとなった。以上、グリア細胞によるRGCの突起伸展作用、さらに液性因子のATPによるP2 受容体を介した突起伸展作用が明らかとなった。グリア細胞の機能、特にグリア伝達物質による調節機能が、RGCの突起伸長さらには、RGCの生存・維持等と関連している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の2点を明らかに出来たことが、その理由である。1.グリア細胞(ミューラー細胞及び視神経アストロサイト)による、RGCの突起伸展作用を認めた。緑内障モデルでは、RGCの軸索流障害や突起伸展障害がよく認められることから、これらグリア細胞の機能変調が、RGC突起伸展に影響を与える可能性が強く示唆された。2.グリア伝達物質ATPが、突起伸展作用と関連していることが明らかとなった。今回は、グリア細胞とRGCが接触しない実験モデルを用いていることから、液性因子の関与が考えられるが、その候補分子としてATPを見出した。グリア細胞がATPを介してRGCの突起伸展を引き起こしているか否かの直接証拠はまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2点を明らかとする。1.グリア細胞(ミューラー細胞及び視神経アストロサイト)のRGC突起伸展作用における、ATPの役割を直接証明すること。2.P2受容体サブクラスの同定と、突起伸展に関与する細胞内シグナルを同定すること。3.グリア細胞が、ATPによるオートクラインシグナルにより産生するBrain deribed neurotrophic factor (BDNF) 等の各種突起伸展因子を同定し、その突起伸展における分子メカニズムを明らかとする。これらの解析を介し、RGCを物理的に支えるミューラー細胞及び視神経アストロサイトの、軸索伸展に対する役割を明らかとし、そのメカニズム解明から正常眼圧緑内障の分子病態解明に直接繋がる基礎データを蓄積する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度も、主に消耗品費として使用する。昨年度は、RGC可視化するマウス(Thy1-CFP)の繁殖が予定通りに進まず、繁殖数が少なかったため、それらに繰り越し分は、実験動物及びそのイメージング試薬に充てる。本年度全体の内訳は以下である。・実験動物・培養試薬及びプラスティック類・イメージング試薬・分子生物学試薬・その他(英文校正、別刷り代等)
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