研究課題
前年度までに、pDNAとカチオン性高分子であるpolyethylenimine (PEI)を結合させたカチオン性複合体にγ-polyglutamic acid (γ-PGA)あるいはchondroitin sulfate (CS)を被膜したpDNA-PEI-γ-PGA(γ-PGA複合体)、pDNA-PEI-CS(CS複合体)の構築に成功した。γ-PGA複合体およびCS複合体はともに、カチオン性複合体で認められた細胞毒性や硝子体白濁を示さず、ヒト網膜由来細胞ARPE-19細胞に対して高い遺伝子導入効率を示した。さらに、各複合体を日本白色家兎に硝子体内投与し、24時間後の網膜中の遺伝子発現量について定量解析した結果、PEI複合体およびCS複合体のいずれも高い遺伝子発現効果を示した。本年度はpDNAからsiRNAへ適応拡大を試みた。モデルとしてホタルルシフェラーゼに対するsiRNAとPEI、γ-PGAを混合し、siRNA-PEI-γ-PGA複合体(γ-PGA複合体)の調製を試みた。各成分の混合比と調製プロセスを最適化することで、ナノサイズのγ-PGA複合体の構築に成功した。製剤学的検討により最適化したγ-PGA複合体をルシフェラーゼ恒常発現メラノーマ細胞に添加し、遺伝子抑制効果および細胞障害性について検討した。その結果、γ-PGA複合体は市販の遺伝子導入試薬であるlipofectamineに匹敵する高い遺伝子抑制効果を示した。また、γ-PGA複合体はlipofectamineで認められた細胞毒性を示さなかった。以上のように、我々は本研究によって、γ-PGA複合体およびCS複合体が高い遺伝子導入効率と安全性を兼ね備えた眼科疾患用遺伝子ベクターになり得る可能性を示した。また、我々の技術はpDNAだけでなくsiRNAにも適応可能であることを明らかにした。今後は、モデル動物を用いた遺伝子抑制効率および薬理効果の評価を引き続き行っていく予定である。
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Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 36 ページ: 1794-1799