研究課題/領域番号 |
23659816
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
篠宮 克彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50585289)
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研究分担者 |
横井 則彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60191491)
上田 真由美 同志社大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60398386)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ドライアイ / マウスドライアイモデル / IL-1β / caspase-1 |
研究概要 |
平成23年度は、当初の予定では培養細胞を用いた実験をメインに行うこととしていたが、caspase-1 knockoutマウス(casp-1 KO)が入手でき、順調に個体数を増やすことができたため、計画を前倒しして動物実験を先行実施することとした。(1)まず動物実験を行うにあたり、適切なマウスのドライアイモデルが必要となるため、その作製方法について検討した。C57BL/6マウスを用い、マウスドライアイモデルとして既報のベンザルコニウム塩化物点眼、ラットドライアイモデルとして既報の眼窩外涙腺摘出の2法を検討した。その結果、眼窩外涙腺摘出で安定した涙液減少および軽度の角膜上皮障害を惹起できることが判明した。本法は簡単な外科手術で長期間にわたり涙液減少を持続できる。眼窩外涙腺摘出はマウスにドライアイ症状を惹起させる手法として有用であり、我々の実験にも適切と考えられた。(2)次にcasp-1 KO、wild type(WT)マウスに眼窩外涙腺摘出を施し、涙液減少および角膜上皮障害の程度を比較した。その結果、いずれも同程度の変化を示し、明らかな差は見られないことが判明した。また雌雄差も見られなかった。(3)さらに、眼窩外涙腺摘出および正常Casp-1 KO、WTマウスの涙液を採取し、ELISA法にて涙液中のInterleukin-1 beta(IL-1β)を測定した。その結果、casp-1 KO、WTマウスいずれもドライアイ眼において、正常眼と比較して涙液中のIL-1βが増加する傾向にあり、眼表面に何らかの炎症性変化が起こっていると考えられた。Casp-1 KOマウスはIL-1β変換酵素を欠損しているにも関わらず、ドライアイ症状の惹起に伴って涙液中のIL-1βが増加した。これは我々の予想とは反するものであり、その意味するものについては今後詳細に検討していく必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中で重要なステップであった、マウスのドライアイモデルを確立することができたことは意義が大きかった。Casp-1 KOおよびWTマウスに眼窩外涙腺摘出を施すことによってドライアイモデルマウスを作製することができた。これらの動物を用いて、ドライアイ症状の惹起により涙液中でIL-1βの上昇が見られることを確認できた。以上のように、ドライアイと涙液中IL-1βの増加に関連があることを示唆するデータが得られており、平成23年度の達成度はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も動物実験を主として行う。ドライアイ症状とIL-1βの関連については、タンパクレベルで確認はできているが、mRNAレベルの解析はまだできていない。ドライアイによるIL-1βの産生経路にinflammasomeが関与しているかは現時点では判明しておらず、また当初の予想とは異なる機序が関与している可能性も明らかとなりつつある。また涙液中IL-1βの由来も明らかではない。本年度は前述のような不明点を解消すべく研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度と同様、平成24年度の研究費は動物実験に用いる試薬、分析用試薬の購入、実験動物の購入および維持など、主に消耗品費として使用する。また研究成果の発表あるいは情報収集のため、各種学会に参加するため旅費としても使用する。
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