研究概要 |
細胞外やエンドゾーム内において病原体構成成分を検知するToll like receptor (TLR)が同定され、その機能解析が大きく進んでいる。また細胞内に侵入したウイルスに対する防御機構としてRIG-Iファミリーなどの細胞内病原体認識機構の研究も進んでいる。角・結膜上皮細胞にはTLRsのうち、特にTLR3が強く発現しており、また、RIG-I、MDA5の発現も確認できている。当該年度には、細胞内病原体認識機構であるRIG-IやMDA-5の共通のアダプター因子であるIPS-1を欠損したマウスを用いて、これらの機能を解析し、ウイルス由来二本鎖RNAを点眼したIPS-1欠損したマウスの結膜上皮では、ウイルス由来二本鎖RNAを点眼した野生型マウスを比較して、Rsad2, Mx2, Cmpk2, Iigp2, Ifi44, Cxcl10, Mx1, If9203, Rtp4などの遺伝子発現が有意に低下していた。また、IPS-1欠損したマウスで遺伝子発現が減少する遺伝子群のうち、いくつかは、EP3欠損マウスの結膜上皮で遺伝子発現が上昇し、IPS1EP3二重欠損マウスにおいて、その遺伝子発現が有意に減少することも判明した。このことは、EP3がTLR3により誘導される各種サイトカイン等を抑制しているだけではなく、RIG-IやMDA-5を介して誘導される各種サイトカイン等も抑制していることを示している。
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