研究課題/領域番号 |
23659818
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
外園 千恵 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30216585)
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研究分担者 |
奥村 直毅 同志社大学, 公私立大学の部局等, 助教 (10581499)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヒト角膜上皮細胞 / アミノ酸 / アルギニン / グルタミン酸 / グルタミン / アラニン / アスパラギン酸 |
研究概要 |
SV40不死化ヒト角膜上皮細胞を用いて、20種のアミノ酸を含むFULL培地、アミノ酸を全て抜いたZERO培地、FULL培地より特定のアミノ酸のみを欠損させた欠損培地、ZERO培地に特定のアミノ酸(各10mM)を添加した添加培地が、細胞数、細胞形態に及ぼす影響を検討した。FULL培地では培養角膜上皮細胞が増殖し、ZERO培地では細胞の脱落が生じた。欠損培地では、Arg欠損培地、Glu欠損培地、Asn欠損培地、Ala欠損培地の順に細胞の増殖が妨げられ、とくにArg欠損培地での増殖抑制が顕著であった。添加培地では、Asn添加培地、Glu添加培地においてほぼ同様の増殖促進効果を認めた。細胞形態には、培地の違いによる明らかな差を認めなかった。 またSV40不死化ヒト角膜上皮細胞を6 well plateに播種、confluentになるまで培養し、チップの先端で各wellに直線状創傷を作成した。各種アミノ酸含有もしくは非含有培地の影響について、位相差顕微鏡で撮影、創傷距離を解析した。FULL培地に比べて欠損培地で創傷治癒の遅延が顕著であり、Arg欠損培地での創傷治癒抑制が明らかであった。添加培地では(Gln+Glu)添加培地および(Ala+Asn)添加培地においてほぼ同様の治癒促進効果を認めた。細胞形態には、培地の違いによる明らかな差を認めなかった。 培養ヒト角膜上皮細胞はアミノ酸の濃度、種類によって増殖性に明らかな差を生じ、in vitro創傷治癒モデルでも修復に明らかな差を認めた。ヒト涙液中のアミノ酸組成と濃度が、種々の眼表面疾患の病態に関与している可能性がある。 また涙液中のアミノ酸発現を網羅的に解析し、血漿中のアミノ酸発現と比較、検討したところ、正常涙液のアミノ酸プロファイルは血漿と明らかに異なり、Tau、Glu、Aspが濃度値、構成比ともに高値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト角膜上皮細胞の培養において、種々のアミノ酸を添加あるいは欠損させた場合の細胞増殖に及ぼす影響が明らかであった。タイトジャンクションに及ぼす影響についても、予備的検討で興味ある結果を得ている。ヒトの涙液中アミノ酸プロファイルは血漿と異なることより、涙液中アミノ酸が果たす生理的役割は大きいと推測された。
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今後の研究の推進方策 |
培養ヒト角膜上皮細胞を用いて、種々のアミノ酸を添加あるいは欠損させることで細胞間タイトジャンクションがどのように変化するかを検討する。ドライアイ患者など角膜疾患におけるアミノ酸点眼の影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.角膜上皮層のタイトジャンクションにアミノ酸が及ぼす影響 12ウェルプレート細胞培養チャンバー(直径12mm、孔径0.4μm、透過性膜を有する)に培養ヒト角膜上皮細胞を2×105cells/cm2の濃度で接種し、SHEM培地を用いて10日間培養する。アミノ酸がタイトジャンクションにどのような影響をあたえるかを検証するために、経上皮電気抵抗(TER) 値(Ω・cm2)を epithelial volt-ohm meter (EVOM; world Precision Instruments, Sarasota, FL)をもちいて測定、アミノ酸調整培地に交換前と交換3時間後の抵抗値を比較する。2.アミノ酸添加点眼液の効果 涙液中アミノ酸解析の結果を踏まえて、(A)Arg/Gln 40mM(B)Ala/Asn/Gln 40mMの2種アミノ酸含有人工涙液を作成する。ドライアイ、眼精疲労、重症角結膜疾患において、これらの点眼液を使用し、自覚症状および他覚所見(フルオレセインによる点状染色(SPK)、break up time(BUT))の変化を検討する。
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