研究概要 |
肝芽腫の悪性度を決める重要な要因はDNAメチル化異常であるという着想から、肝芽腫の予後を規定する分子マーカーをDNAメチル化解析によって探求することを目的とした。 肝芽腫腫瘍検体からmacrodissectionによって胎児型・胎芽型肝芽腫の領域を分けて採取し、それぞれから抽出したDNAを次世代型シークエンサーを用いて網羅的メチル化解析をおこなった。正常肝組織と比較して2倍以上のメチル化率を示したCpGサイトを有する遺伝子は、胎児型で1,638遺伝子、胎芽型で2,019遺伝子存在した。 肝腫瘍cellline(HuH6, HepG2)を5-aza-dCにて脱メチル化処理し、発現アレイ解析を用いてメチル化によって発現抑制を受ける遺伝子を解析した。脱メチル化処理により2倍以上の発現を呈した遺伝子は905個存在した。 上記のメチル化アレイ解析と発現アレイ解析によって得られた遺伝子を照らし合わせることによって、83の候補癌抑制遺伝子が抽出された。現在個々の遺伝子について実際に臨床検体を用いてメチル化率を解析している所である。病理組織学的に分類される胎芽型肝芽腫(embryonal type : 高悪性度)と胎児型肝芽腫(fetal type : 低悪性度)を分別して、組織型に応じたDNAメチル化プロフィールを解析し、特異的にメチル化率の異なる候補癌抑制遺伝子を同定する本研究結果を用いて、肝芽腫のprogressionにおけるDNAメチル化異常の関与を明ちかにし、DNAメチル化異常からみた肝芽腫の予後予測因子としての分子マーカーを確立することが可能となると考えている。
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