研究課題/領域番号 |
23659828
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成島 三長 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80431873)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 神経 / 軸索 / 再建 / ミトコンドリア |
研究概要 |
癌などの腫瘍切除後、マイクロサージェリー技術を用いて神経吻合・神経移植・血管付き神経筋移植などを行っている。しかし神経再生のための足場を構築しているに過ぎない。欠点としてI)神経再生までに一般的に数カ月かかり、効果器である筋などは再生神経到達前に萎縮してしまい本来の機能回復を得られない。II)神経軸索再生時に神経鞘が瘢痕化し再生軸索数が制限されることがあげられる。今回の研究でこれらの欠点を突破する神経軸索融合を目指す基礎的実験を行っている。細胞内骨格およびモータータンパクなどの移動などが"生きたまま"可視化でき、電気生理学的手法の併用で、Waller変性回避の 細胞内変化と機能回復過程とが同時に確認することを目的として実験を行った。平成23年度は生きたヤリイカ(冬季)およびスルメイカ(夏季)を用いて、1)巨大軸索の正常軸索内輸送の観察手法を確立すること。2)圧迫による軸索挫滅後、軸索機能再生の変化を経時的に電気生理学的手法および分子解剖学的手法を用いて観察する。電気生理学的には軸索に対し電気刺激を行い、筋電図および神経伝導速度等を適宜計測し機能回復過程を観察する。同時に蛍光マーカーを用いて軸索輸送の動きを観察し軸索輸送の回復過程を観察することをめざした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は切断後再接合の前段階として活イカを用いて冷水麻酔下に背側より巨大軸索を露出させ, In vivoで実験を行う手法の安定化を図れた。・In vivoにおける正常活イカ軸索の電気生理学的データを取得する。1)巨大軸索の正常軸索内輸送の観察手法を確立することを目的に、軸索内微小管および微小管上を走行するモータータンパクのうちKIF1bによって運ばれるミトコンドリアを蛍光マーカーにて染色し、経時的変化を実体顕微鏡および蛍光顕微鏡にて観察し使用する適切な蛍光マーカーをmitotrackerとして染色実験をおこなった。また適切な濃度および使用方法についても検討をおこなったが、実体蛍光顕微鏡ではmitotrackerの染色による観察は困難であったため、現在他の蛍光マーカーによる染色実験及び光学顕微鏡による観察実験を計画中である。2)圧迫による軸索挫滅後、軸索機能再生の変化を経時的に電気生理学的手法および分子解剖学的手法を用いて観察については、刺激装置の設定および刺激電極の開発をおこなった。軸索に対し電気刺激を行い、筋電図および神経伝導速度等を適宜計測した。in vitroにおける巨大軸索の神経伝導速度とほぼ同等であり、コントロールとして使用可能であると考え、来年度圧迫挫滅実験を行いそのデータを集積する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)巨大軸索の正常軸索内輸送の観察手法を確立するため、現在他の蛍光マーカー(JC-1等)による染色実験及び光学顕微鏡による観察実験を計画中である。2)筋電図および神経伝導速度等の計測データについて検討を行いつつ、来年度圧迫挫滅実験を行いそのデータを集積する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の実験データの解析まとめと追加実験を行う。平成23年度にて確立が出来ていない、軸索内輸送の蛍光観察手法を確立する。 手法の確立後In vivoにおける正常活イカ軸索切断後の再生に関する検討を圧迫実験と同じ手法を用いて行い、圧迫挫滅実験の電気生理学的・分子解剖学的データおよびスミソニアン博物館のデータをもとにその再生過程を比較検討する。上記が予定通り遂行されれば、東京大学工学部と協力し、電気的細胞融合法を用いた細胞融合法の確立をめざす。このためには神経軸索を融合させる際に細胞膜を引き寄せることと周囲の不必要な線維組織の除去が必要である。これに関しては簡易デバイスを作成使用する。コラゲナーゼなどの分解酵素を用いた繊維組織除去方法を検討する。
|