本研究の目的はメラノサイトを導入したヒト皮膚モデルを組織工学、再生医療の手法を用いて改良して、肝斑の病態をシミュレーションしうる皮膚モデル作製に挑むことである。このヒト皮膚モデルは同質のものを大量に作ることが可能なので、動物やヒトでは通常出 来ない分単位、時間単位での非常に短い時間ごとの標本採取や、現実には起き得ない過酷な条件下での治療効果の検討などに用いることができる。このモデルを用いて肝斑の治療法としてよく行われているレーザートーニング、Intense Pulsed Light (IPL)治療、ハイドロキノン、レチノイン酸、トラネキサム酸、ビタミンCの作用機序を探り、またその至適治療条件のスクリーニングを行う。これにより既存の治療法の効果の比較を行うことができるようになり、肝斑治療の標準的なプロトコールの確立、新たな治療法の開発、評価法の確立につなげる。 初年度は肝斑皮膚モデルの作製法を確立するために、今までに確立した表皮内にメラノサイトを含む肝斑皮膚モデルを改良して、新たに真皮層内にもメラノサイトが落ち込んだ深在性肝斑皮膚モデルの作製法を確立したが、昨年度はこれについては現在知的財産権の申請を行った。このため、本年度は改めてこれを用いた試料を作成しての追加実験を行うこととして、従来からの病理学的手法とは直接関係のない定量PCR法、RT-PCR法による各種増殖因子、各種コラーゲンの遺伝子発現評価法を試みた。
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