CO2中毒において実際の事件および災害からその有害性は認知されているが、中毒死となるその直接死因のメカニズムはまったくの不明である。申請者らはモデル動物を用いて、段階的に分けた濃度のCO2チャンバー内での血行動態、呼吸状態、血液ガスをモニタリングすることにより、その直接死因を探るとともに、静脈血採血、摘出心、肺および脳を生化学的、分子生物学的手法で解析する。さらに培養心筋細胞を用いてCO2負荷による反応を解析し、より詳細なメカニズムの解析を試みる。その結果からモニタリングすべき項目を検討・設定し、臨床における血中CO2濃度の臨床的限度の設定を行うことを目的とする。 初年度において、高CO2環境の設定、および正確なモデルの作成に従事してきた。近年の動物倫理審査の厳正さ、および実験環境管理の徹底などから、モデルの作成および環境整備に苦慮したものの予備実験段階まで達成している。 30分間の高濃度CO2(80%)投与により、ラットの呼吸停止を確認している。脳血流および心臓機能の検査を追加する予定である。CO2細胞培養については、新生児ラットのプライマリーカルチャーの実験系を立ち上げており、in vivo実験と同時に、CO2負荷条件下での培養細胞細胞の観察、および細胞レベルでの心筋代謝、肥大・増殖・炎症、アポトーシスのコントロールとの比較・評価を行い、そのメカニズムの解明も進める。データが整理でき次第、学会発表と並行して、論文作成する予定である。
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