研究概要 |
本研究では,盲腸結紮穿孔により敗血症を生じた敗血症マウスモデル,およびインフルエンザRNAセグメントなどの静脈内投与を用いて,遺伝子認識型Toll-like受容体(TLR3, TLR7, TLR8, TLR9)の作用と発現を,脳,肺,心臓,肝臓,脾臓,腎臓,腸管,膵臓,血管などで評価した。 まず,敗血症モデルマウスは,48時間以内に全例が死亡する盲腸結紮穿孔(cecal ligation and puncture: CLP)モデルを用いた。CLP作成後の時系列において,転写因子nuclear factor-κB(NF-κB)やactivator protein-1(AP-1)の活性が高まることを,摘出した肺と心房筋などで確認した。TLR3, TLR7, TLR8およびTLR9のmRNAは,肺,右心房,肝臓,脾臓,腎皮質,空腸,結腸,膵臓,副腎,大動脈に存在することが確認できた。しかし,これらのTLRは,CLP作成後に正常状態よりも減少する傾向が認められた。 一方,TLR3, TLR7, TLR8およびTLR9のsiRNAにより,これらの発現量をあらかじめ減少させても,肺におけるNF-κB やAP-1の活性を抑制できず,48時間以内に研究に用いた10例全例が死亡した。一方,TLR9リガンドとしてCpG DNA,TLR3/7/8リガンドとしてインフルエンザウイルスRNAセグメントを尾静脈より静脈内投与した研究系では,TLR3, TLR7, TLR8およびTLR9のsiRNAによる発現減少により,各々10例がすべて生存した。 細菌性感染による敗血症病態では,TLR3, TLR7, TLR8, およびTLR9は,敗血症病態の増悪に強く関与していない可能性が示唆された。しかし,ウイルス感染では,TLR3, TLR7, TLR8, およびTLR9が生存に関与する可能性が示唆された。
|