研究概要 |
救急医療では疾患重症度をリアルタイムに示すバイオマーカーが、患者の仕分け、集中治療室での治療法の適否判定で求められている。研究者等は、各種疾患のエネルギー代謝の研究から、ATP産生低下時に体内に溜まる血中乳酸値とATP値を合わせて評価する新規バイオマーカー「ATP-Lactate Energy Risk Score, A-LES値 (乳酸値/ATP 値)」が、疾患重症度をリアルタイムに示すバイオマーカーとして、極めて有効な指標であることを見出して、以下の研究成果を挙げた。 1)新規バイオマーカー、A-LES値の正常値の検索:乳幼児、幼児、成人、高齢者(男女)の正常値を各群約100名を目標にデータ収集して、各年齢での正常値を明らかにした。またATP値は60歳以後の低下する傾向が見られたが、全年齢を通して有意差は無く、男女差も見られなかった。採血部位の末梢血、中心静脈血、動脈血間でのATP、乳酸値に変化は無かった。 2)A-LES値、ケトン/ATP値のリアルタイム・リスク診断バイオマーカーとしての有用性を各種疾患で検証した。その結果、従来法のAPACHE IIスコアに比べて、A-LES値はより感度良く変動しており、リアルタイム・バイオマーカーとして有益であることが分かった。またReceiver operating characteristic (ROC) curve解析から単純解析のA-LES値だけでAPACH IIとほぼ同等の予后予測のできることが明確となった。 3)次に集中治療室に滞在している間の患者の重症度の変化をリアルタイムに表すマーカーを検索する目的で、APACH II、血液ATP、A-LESレベルの変化を追跡調査した。その結果、これらのパラメーターの中でA-LES値が最も敏感に患者の重症度を反映することが明らかになった。
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