【目的】頭部外傷モデルで一般的なFluid percussionは、多くの施設で使用されている一方で、頭部外傷の量的な制御は困難であるのが問題であった。我々が作成したMicrowave(MW)照射による新しい実験脳損傷モデルが、びまん性脳損傷の病態に類似し、損傷の量的な制御も可能とするモデルとなりえるかを検討することを目的とした。【対象・方法】ラット脳に短時間のMicrowaveを照射した。強度によって、Mild(2Kw/0.1sec)、Moderate(2.5Kw/0.1sec)、Severe(3-3.5Kw/0.1sec)に分類した。照射時のバイタルサイン、照射前後の動脈血液ガス等や照射後の病理学的変化を観察した。【結果】MW照射時、血圧は一過性に上昇を認めるが、その後短時間で照射前の血圧に復した。動脈血液ガス所見、Glucose、Lactateを照射前後、及び照射10分後に測定を行ったが、有意な変化は認められなかった。病理学的検索では、HE染色で神経細胞の変性が観察され、Microwaveの強度が強いほど変性が多く認められる傾向があった。さらに、免疫組織学的観察を行うと、Heat Shock Protein(HSP)、βAmyloid Precursor Protein(APP)ともに受傷後、比較的早期(3-6時間)にびまん性に認められた。【考察・まとめ】MV照射量に相関して脳組織に損傷が起きることが示された。また、従来の頭部外傷モデルでは困難であった脳損傷の量的な制御が可能であり、中等度~軽度損傷モデルでは高次脳機能障害の評価も可能であることが示唆された。
|