研究概要 |
近年、高度侵襲下生じるインスリン抵抗性が、救急患者における血糖管理に関与することと、炎症性サイトカインであるIL-18血中濃度が、メタボリックシンドロームにおける循環器系疾患の発症率に関与することが明らかとなった。本研究は、高度侵襲下のインスリン抵抗性におけるIL-18の役割をマウス敗血症モデルにおいて検討するものであり、IL-18濃度の上昇はインスリン抵抗性を促進させると予測した。平成23年度はエンドトキシン血症モデルマウスを用いた検討を行った。 C57BL/6J(WT)及びIL-18 knock out (KO)マウスに40 mg/kgのエンドトキシンを腹腔内投与し、0, 15, 30, 60分後の血糖値を測定した。エンドトキシン投与後12時間後に犠死せしめ、血糖値、インスリン、コルチコステロン、サイトカイン(IL-6,TNF-α, IFN-γ, IL-10)濃度を測定した。また、肝臓と筋肉よりmRNAを抽出し、insulin receptor substrate-1 (IRS-1), IRS-2を測定した。LPS投与0時間では血糖値にWT, KOとも有意な差は見られなかったが、投与後15, 30, 60分後ではWTに比べてKOで血糖値が有意に高くなっていた(p<0.01)。12時間後にはWT、KOともに低血糖となり、有意差は見られなかった。IL-6, TNF-αはLPSで著増したが、KOで差は無く、IFN-γはKOで有意に低値であった。IL-10はKOで有意に高値であった。インスリン、コルチコステロン濃度は12時間では有意差は見られなかったが、肝臓のIRS-1 mRNAはKOマウスで有意に低値であった。これらの結果より、IL-18は侵襲早期の血糖値上昇を抑制し、さらに、インスリンシグナル経路にも関与する可能性が示唆された。現在雌マウスでも解析を行っている。
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