本研究では、急性炎症下の血糖変動への性差とIL-18の関与について検討した。マウスに40 mg/kgのLPSを用いて急性エンドトキシン血症モデルを作成した。血糖値はLPS投与後1時間後に高血糖を引き起こし、その後低血糖に陥った。6時間後の血中インスリン濃度は高値を示したが、雌に比べて雄の方が高値であった。肝臓のmRNA発現量は、IRS-1に変化は見られなかったが、IRS-2はLPS投与で有意に増加し、雄よりも雌で有意な増加がみられた。雌では、Cbl-bも有意に増加した。好中球のアポトーシスも雄では抑制されるが、雌では促進傾向が見られた。これらより、エンドトキシン誘発の低血糖では機序に性差が存在する可能性が示唆された。次に、高血糖を示したLPS投与後1時間に着目し、IL-18ノックアウトマウス(KO)を用いて検討した。野生型(WT)ではLPSにより血糖が上昇し、それはKOでさらに顕著であった 。このとき、血漿中インスリン濃度はWTに比べKOで高値であり 、コルチコステロン濃度に有意差は見られなかった。各種インスリン関連シグナルは、筋肉や脂肪では有意な差は見られなかったが、肝臓においてはIRS-1の発現がKOで有意に低値であった。よって、急性炎症期にはIL-18KOマウスでは高血糖、高インスリン血症が確認され、インスリンシグナルの低下が機序として考えられた。血漿中TNF-α濃度に有意差は見られず、IL-6濃度はKOで有意に高値であったが、インスリンシグナルとの関連についてはさらに検討を要する。マウス急性エンドトキシン血症モデルの超急性期では、IL-18は、LPSに惹起される高サイトカイン血症と高血糖、高インスリン血症を抑制する可能性が示唆された。また、それに引き続く低血糖期では、低血糖の機序が性別で異なる可能性が示唆された。しかし、詳細な機序はさらなる検討が必要である。
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