T-box型転写因子をコードするTBX1は、新生児4000人に1人に認められる22q11.2欠失症候群 (DiGeorge症候群、velo-cardio-facial症候群) の疾患遺伝子である (OMIM #188400)。同症候群では、胸腺形成不全による細胞性免疫異常、心血管奇形、両眼隔離、小顎症、低耳介、耳介変形の他に、口蓋裂を認める。 申請者らは、Tbx1遺伝子欠損マウスに多様性のある口蓋裂を認め、口蓋粘膜上皮と下顎との病的癒着がおきること、上皮細胞の増殖や分化に異常があることを見いだした。Tbx1は口蓋粘膜に発現する。そこで、Tbx1を上皮特異的に欠損させたコンジェニタルノックアウトマウスを作成したところ、口蓋前方部の口蓋裂を認めた。また、細胞レベルの解析から、Tbx1が細胞周期調節に関与することが分かった。一方、Tbx1遺伝子欠損マウスでは間葉系細胞の増殖が抑制され、口蓋突起が小さく、Tbx1が間接的に口蓋におけるBmp4やPax9の発現に関わることが示唆された(船戸ら、2012)。
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