T-box型転写因子をコードするTBX1は、新生児4000人に1人に認められる22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群、velo-cardio-facial症候群)の疾患遺伝子である。同症候群では、胸腺形成不全による細胞性免疫異常、心血管奇形、両眼隔離、小顎症、低耳介、耳介変形の他に、口蓋裂を認める。申請者らは、Tbx1遺伝子欠損マウスに多様性のある口蓋裂を認め、口蓋粘膜上皮と下顎との病的癒着がおきること、上皮細胞の増殖や分化に異常があることを見いだした。また、細胞レベルの解析から、Tbx1が細胞周期調節に関与した。以上の結果より、Tbx1が、口蓋発生の時期に、口蓋粘膜上皮の増殖や分化の調節に必須であり、病的癒着を防ぐ分子であることが分かった。
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