本研究では,ユビキチンリガーゼE3のノックダウンによる骨芽細胞分化誘導効果の検討及びプロテアソーム阻害剤とユビキチンリガーゼE3の骨芽細胞分化誘導機構の解明を行った.ST-2細胞培養系でユビキチンリガーゼE3の一つであるSmrf-1についてTRUE gene silencing 法を用いたsgRNAを数種類設計しトランスフェクションした.Western blot解析を行いてSmrf-1の発現量を調べたところ,ノックダウンが確認された.また,アルカリフォスファターゼ活性染色を行ったところ,活性の増加が観察された.これらの結果よりSmrf-1 sgRNAが骨芽細胞分化誘導作用を有する可能性が考えられた.また, Schnurri-3 (Shn3)とWWP-1のsi RNAをMC3T3-E1細胞に導入し,それらの発現をノックダウンさせ,同様に検討した.Runx2およびオステオカルシンmRNAの発現が増加した.PTHの間欠的投与をMC3T3-E1細胞を用いて行ない,mRNAの発現量の変動についてマイクロアレイを用いて解析した.Wiskott-Aldrich syndrome protein family member (Wasf) 2の発現が特異的に減少し,新たな標的分子であることを明らかにした.Wnt inhibitorであるIWP-2やprotein kinase C inhibitorであるGo6976はこのWasf 2発現の変化を抑制した.同時に骨シアロタンパク質BSPの著しい発現の低下し,Wnt経路やPKC経路を介してWasf2を調節し,さらに骨のマトリックスタンパク質の産生を制御する新たな機構が明らかになった.本研究によって,ユビキチン・プロテアソーム系制御を介した骨形成の新たな分子機構が解明され,新たな骨形成誘導法の開発のための基礎となる知見が得られた.
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