研究課題
本研究は、骨芽細胞上に発現するRANKL分子と結合する骨形成促進ペプチドと骨形成促進しないペプチドとの結晶構造解析情報を比較検討する事により、骨形成を促進するRANKL上の特異的ペプチド結合部位を見出し、その部位より新規ペプチドの設計およびその骨形成促進能力を評価するという研究である。 骨形成促進するペプチドと骨形成促進しないペプチドは、同じ9つのアミノ酸から構成されるW9ペプチドを異なる溶媒にとかしたものを研究を開始した当初は用いていた。溶媒をアルカリ性にしたペプチド(pH12)は骨形成が促進され、中性に近い溶媒を用いたペプチドは骨形成を促進しなかったため、結晶構造解析に先立ち、まずNMR(核磁気共鳴)を用いてペプチドの状態を解析した。骨形成促進するペプチドの分子凝集しており、逆に骨形成を促進しないペプチド分子は逆に凝集していないということが明らかとなった。この凝集しているという結果の解釈は、目に見える凝集反応ではないが、何らかの分子の塊構造が骨芽細胞上のRANKL同士の橋渡し構造を作り、逆シグナルを入れたのではないかという解釈もできるが、結論的に、ペプチドの溶かし方によって骨形成促進する理由は、NMR解析ではみつからなかった。 同時に進めていたスクリーニングテストにより、9つのアミノ酸で構成されるW9ペプチドよりも11のアミノ酸で構成されるOP3-4ペプチドの方が、同じ環状ペプチドでありながら、in vitroにおける骨芽細胞分化促進能および頭頂骨骨欠損モデルにおける骨新生能の両方において2倍の骨形成促進作用を有することを発見した。この両者ともRANKL分子に結合することから、このW9ペプチドとOP3-4ペプチドとの骨形成能力の差をRANKLとの結合部位の差として説明できるのではないかという仮説を立てた。
3: やや遅れている
当初予定していた骨形成促進ペプチドと骨形成を促進しないペプチドの差が、同じペプチドの異なる溶かし方によっており、NMR解析の結果から、骨形成促進するペプチドが凝集しており、骨形成を促進しないペプチドが凝集していないという結果となり、RANKLとの結合状態により骨形成促進能が変化するという仮説が正しいかどうか説明できない状態となったため。 (ここでいう、凝集とは、目に見える凝集ではなく、分子密度が高く折り重なっているという状態を示している。)
研究実績の概要にも示したが、W9ペプチドよりも骨形成促進能を有するOP3-4ペプチドを発見し、この二つのペプチドが双方ともにRANKLに結合することから、W9ペプチドとOP3-4ペプチドとの骨形成能力の差をRANKLとの結合部位の差として説明できるかをまず、NMRを用いた解析により行う予定である。 そのためには、リコンビナントヒトRANKLを14Nを用いたタンパク発現系を構築し、RANKLとペプチドとの結合状態を検討、その後、結晶構造解析まで持っていく予定である。
ペプチドの合成費用、14Nを用いたリコンビナントヒトRANKLの合成および精製、連携研究者の大阪大学の中川敦史教授や研究協力者の池上貴久教授との打ち合わせ旅費、およびSpring8までの旅費、学会発表旅費など消耗品と旅費に主に使用する。
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