研究課題/領域番号 |
23659868
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野田 政樹 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50231725)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 顎骨 / 骨芽細胞 / 副甲状腺ホルモン / TRPV4 |
研究概要 |
骨粗鬆症の患者においては、骨量低下の抑制の治療が行われ、顎骨においてもその量における制御が推察されている。一方、顎骨は歯科インプラントの支持の上で重要な骨量の確保が重要であり、その上で、副甲状腺ホルモンやメカニカルストレスによる骨量の制御が期待される。本研究においては、副甲状腺ホルモンが顎骨の量を制御することを仮説とし、平成23年度の検討を行った。すなわち、副甲状腺ホルモンの存在下で、骨芽細胞のMC3T3E1を培養し、アルカリフォスファターゼの発現に対する検討を行った。副甲状腺ホルモンの様々の用量に反応しアルカリフォスファターゼの発現のレベルが促進されることが観察された。さらに、副甲状腺ホルモンは早期の段階においても1時間以内に骨芽細胞の遺伝子発現を促進的に制御することが見出された。この早期の応答性の遺伝子群は1時間においてピークを示しその後、経時的に6時間~24時間までの経過を観察すると、徐々にベースラインに復帰することが明らかになった。また、顎骨におけるTRPV4の機能を検討しメカニカルストレスにおける顎骨においてTRPV4の存在下では維持される骨量がその欠失によって骨密度の低下が起こることが明らかになった。このTRPV4のメカニカルストレス応答性の骨量維持作用は顎骨特異的であり対照とした頭蓋冠の骨(頭頂骨)においては、TRPV4の存在非存在にかかわらず骨密度が変わらなかった。以上の検討の結果は、平成23年度において副甲状腺ホルモンの存在下で骨芽細胞の分化の促進がおこること、またその際には早期の転写因子群の発現があること、同時にこれらの早期の変動する転写因子群がメカニカルストレスに応答するとともに顎骨においてはそのメカニカルストレス応答性の骨としての特性の結果、TRPV4が存在することにより骨量が維持されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで副甲状腺ホルモンの下で骨芽細胞MC3T3E1細胞の表現型発現に対する解析が行われ、この結果、副甲状腺ホルモンの用量依存性ならびに時間依存性で骨芽細胞の分化指標の遺伝子の制御が解析できた。このことは骨芽細胞に対する細胞生物学的な検討を行う本研究の計画を達成している。また、TRPV4のメカニカルストレスに対する感受性因子としての機能を検討するためにノックアウトマウスにおける顎骨の量を検討した。この結果、顎骨のBMD(骨密度)はノックアウトマウスに比べ野生型のほうが多く、一方、力の加わる顎骨に比べ力の加わらない頭蓋冠の骨においては、このような差は見られなかったことからTRPV4の骨量維持や骨形成に対するメカニカルストレスの受け手として役割が明らかになった事も達成点である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は副甲状腺ホルモンの持つ骨芽細胞への分化促進活性とTRPV4の持つ骨芽細胞の分化に対するこの遺伝子の発現との相関を検討する。特に遺伝子発現についてはTRPV4に対するBMPの用量依存性を検討する。用量依存性の検討の後、至適なBMP濃度を用いて時間経過を観察する。さらに、骨芽細胞の初代培養と細胞株を用いて、少なくとも2つ以上の細胞でTRPV4が骨形成に関わる副甲状腺ホルモンの下流の分子の一つであるBMPに応答することを明らかにする。加えて、BMPのTRPV4への制御が転写性に起こるか、または、仲介のタンパクを介して間接的に起こるかをそれぞれDRBおよびシクロヘキシミドを用いることによって検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費1,690,000のうち物品費1,196,000、旅費52,000、人件費・謝金52,000、間接経費390,000とする。
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