研究課題
がんの骨転移成立過程においては、転移がん細胞と骨微小環境との生物学的クロストークの重要性が認識されている。次に我々はこのクロストークの実体を分子レベルで理解することを目的に、GFPを安定発現させたMDA-MB-231細胞をヌードマウスの左心室(HI)および脛骨髄腔内(TI)に接種し、骨環境にがん細胞を定住させた。骨転移巣よりGFP陽性のがん細胞のみをFACS Ariaを用いて培養せずに分離し、マイクロアレイ解析を行った。乳腺接種(SC)した乳がん細胞をコントロールとした遺伝子プロファイリングの結果、SC群と比較して発現量が2倍以上に上昇した遺伝子がTI群で226個、HI群で1382個同定され、両群に重複する158個の遺伝子を骨微小環境とのクロストークによって発現が上昇する遺伝子として同定した。これら158の遺伝子を機能別に分類し、特に発現量の高かった遺伝子群を骨とがん細胞のクロストークに関わる遺伝子としてクローニングした。その内訳は、転写因子としてFoxC1、Dec1、NR4A3、分泌タンパク質としてEREG、接着因子としてPCDH10B,ITB5、細胞遊走に関与する遺伝子としてNEDD9である。これら遺伝子群の中からNEDD9に着目しさらに検討を行ったところ、免疫染色により骨転移巣においてNEDD9の強い発現が認められ、またshRNAによるNEDD9のノックダウンは骨転移を有意に減少させる一方で、NEDD9の過剰発現は骨転移を増加させた。さらにNEDD9は骨内での上皮ー間葉転換(EMT)を制御していることも見出したこれらの結果より骨組織で発現が上昇するNEDD9は乳がんの骨転移成立・進展に関与すること示唆された。
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Cancer Research
巻: 72 ページ: 4238-4249
J Bone Oncol
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