研究課題
本研究は原発巣の検査にて、原発巣における転移性癌細胞の有無と転移成立か否かを正確・低価格・簡便に検出するシステムの開発を目的とする。原発巣における転移性癌細胞を検出する分子を同定するため、高転移性癌細胞と非転移性癌細胞の遺伝子とタンパク質の発現の相違をDNAチップ(54675遺伝子)・二次元電気泳動法・質量分析法(iTRAQ法・LC-MS/MS解析)にて解析後、われわれが開発したアルゴリズムによって両データを融合させ分子ネットワーク解析を行い、亢進しているシグナルネットワークを検出した。このネットワークの中で、転移性癌細胞マーカー候補部分子および転移の有無を検出するための重要分子として、MIF、HIF(Hypoxia-inducible Factor)、Nago、E-Cadherin、Biglycan、TG2、CD44、Cytokeratin14、プロテインXを選定した。次に、これらの分子の腫瘍(原発巣)での発現様式と転移との関係を明らかにするために、臨床検体類似モデル系の作製を行った。臨床検体は色々な性格が集まったヘテロな細胞集団なので、転移性癌細胞と非転移性癌細胞の区別ができるように、各細胞を可視化したヘテロな癌細胞集団をヌードマウスの舌に同所性移植し、経時的に頸部リンパ節転移のstage を明らかにした。その結果移植3日は未転移、11日は初期転移(マイクロメタ)、21日は転移中期であることがわかった。これらの検体を使用し、上記選定した分子の腫瘍移植部(臨床検体では原発巣に相当)での分子の発現・局在・転移との関係を検討した。その結果HIF-1α、E-Cadherin、TG2、CD44、Cytokeratin14、プロテインXとの発現の組み合わせと発現分子の局在により、未転移、初期転移、転移中期の予測ができる可能性が示唆されたので、現在その詳細な検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
原発巣の検査にて、原発巣における転移性癌細胞の有無と転移成立か否かを正確・低価格・簡便に検出するシステムの開発を目的とし、24年度では高転移性癌細胞と非転移際癌細胞を混和した細胞集団をヌードマウスの舌に同所性移植し、経時的観察を行い、転移のstageの確認、移植した舌組織において、転移性癌細胞と非転移性癌細胞の指標を使用し、選定した分子の発現と転移性癌細胞の関係およびそれらの分子の局在様式と転移のstageとの関係を明らかにすることを主な研究としていた。選定した分子の舌における発現を調べ、重要な分子を同定し、その分子の組み合わせにて、転移性癌細胞の有無が推測でき、さらに、その分子の局在様式にて頸部リンパ節転移の成立か否かの関係を得ることができているので、上記判定とした。
臨床検体類似モデル系を使用し、HIF-1α、E-Cadherin、TG2、CD44、Cytokeratin14、プロテインXとの発現の組み合わせと発現分子の局在様式により、未転移、初期転移、転移中期の予測ができる可能性が示唆されたので、マウスの検体数を増やし、再現性の確認を行い、臨床検体も加え、原発巣における転移性癌細胞の有無および転移成立か否かを正確・低価格・簡便に検出するシステムの検討を行う。また、上記分子のうち転移性癌細胞マーカー候補分子をノックダウンした細胞を作製し、動物モデルにて転移の有無を検討し、転移性癌細胞の治療候補分子を選定する。
抗体・遺伝子操作関連品(SiRNA・遺伝子発現)・タンパク質解析試薬(ウェスタン・免疫染色)・ヌードマウス・マウス床・餌・培養器具・培養液・血清・チューブ・チップ・プレート等の消耗品および外国語論文校閲、研究成果投稿費に使用予定
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Molecular & Cellular Proteomics
巻: 12(5) ページ: 1377-1394
J Dermatol
巻: 40(4) ページ: 249-58
Clinical Cancer Research
巻: 19(8) ページ: 1-10
http://srv02.medic.kumamoto-u.ac.jp/dept/tumor/index.html