本研究では、歯髄組織を有する抜去歯を用いて、レーザーを用いた抜髄および洗浄操作後の根管壁の微細構造を観察し、レーザー抜髄法の臨床応用への可能性に関する基礎的データを収集することを目的とした。抜歯したヒト健全下顎小臼歯の髄腔開拡後に、#15のK-ファイルを根管内に挿入し根尖孔からファイル先端が見える長さから-2mmを作業長に設定した。作業長-2mmの位置までレーザー用チップを挿入し、10秒間のEr:YAGレーザーによる静止照射を行った。次に、再度作業長-2mmの位置までチップを挿入し、ゆっくりと引き上げながら照射を行った。その後、レーザーを用いた根管洗浄の目的でNaOClを根管内に満たしてゆっくりと引き上げながらの照射を4回繰り返した。各ステップ後の試料を歯軸の方向に2分割して根管壁面に金蒸着を施した後、走査型電子顕微鏡による観察を行った。その結果、根尖近くには10秒間の静止照射によって、アピカルストップ様の構造が形成されていた。引き上げ照射では、根管壁は次亜塩素酸ナトリウムの有機質溶解作用によって石灰化球が出現していた。また、チップが直接接した部位は象牙細管が開口していた。結論として、レーザー抜髄法は従来の方法と異なりクラックが生じる危険性がなく、有効な手法である可能性が示唆された。
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