研究概要 |
歯髄は、保護する歯牙硬組織障害時に患者の疼痛の問題から保存することが困難な場合が多い。しかし、抜髄は生体にダメージを与えるのみならず、残髄、感染源、根充材などにより2次的に根尖病巣を作る場合も少なくない。本研究では、歯髄をそのまま石灰化させるという挑戦的プロジェクトである。そのために、歯髄の構成要素の大部分を占めるコラーゲン、神経線維および血管に結合しバイオミネラリゼーションを起こすペプチドアプタマーを創製し、歯髄内に投与することで、歯髄の生体内石灰化を促し、歯髄保存治療に革命を起こすことである。。我々は、すでにチタンとジルコニアに指向性をもったアプタマー(特定の分子と特異的に結合する核酸分子やペプチド)の一つを発見し誌上発表した(K.Hashimoto,M, Yoshinari,K.Matsuzaka, T.Inoue, K.Shiba, Dental Material Journal,30(6):935-940、 2011、Kokubun K., Kashiwagi K., Yoshinari M., Inoue T., Shiba K. Biomacromolecules, 9:3098-3105, 2008).これらのアプタマーに、既知の抗菌ペプチドとを融合させ人工タンパク質を創製しin vitro, in vivoによる機能発現を確認した。平成23年度は、同様の方法を用いて歯髄の諸組織(特に象牙質、コラーゲン、神経線維、血管)に指向性を持つアプタマーを創製し、このアプタマーを介して、バイオミネラリゼーションを起こすペプチドを固相化できれば、歯髄内石灰化による歯牙の保存を可能にできる。現在象牙質に特異的につくアプタマーの検索中である。
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