研究概要 |
<実績の概要>歯科治療は材料学の進歩とともに歩んでおり、また、レアメタル使用による安定供給は困難であるため、安全な材料の安定確保は喫緊の問題である。現在用いられている歯科金属は修復材料として患者のQOLを高めてきたが、金属による炎症や口腔疾患を引き起こす可能性は否定できず、より安全な代替材料が望まれている。本研究は、申請者らが独創的アイディアにより開発したin vitro,in vivo安全性試験モデルを用いて、世界に類のない次世代マテリアルである「超高純度鉄」の臨床応用に向けた理論的基盤を確立す ることを目的としている。 in vitroの溶出試験では、若干の鉄の溶出は認めたものの、鉄自体は安全であり害があるレベルの溶出とは考えられなかった。生体材料において最も恐れる反応は、炎症であるため、炎症反応について超高純度鉄の生体内での安全性試験を行った。 マウス背部皮下に金属ワイヤーを埋め込み(直径0.8mm,長さ5mm)、経時的にワイヤー周囲の組織を採取した。 in vivoにおける金属イオンの溶出を検討するため、プラズマ発光法による金属イオン定量解析技術(ICP-AES法)およびマススペクトラム解析を加えたICP-MS法により解析した。また、経時的にワイヤーを取り出し、走査電子顕微鏡(SEM法)にて金属表面の腐食を検出した。 結果、超高純度鉄は表面の腐食がほとんどなく、皮下周囲の炎症もほとんどみられなかった。ICP-AES法およびICP-MS法などで解析したが、鉄は赤血球に含まれる成分でもあり、すでに鉄が周囲組織液存在するために超高純度鉄の溶出のみを確実にとらえることは困難であった。しかし、皮下組織の炎症は見られず、材料としての生体適合性は高いと判断できる。このことは、超高純度鉄は安全な生体材料であることを意味し、今後の医療材料への展開につながると考えられた。
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