研究課題/領域番号 |
23659896
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80174530)
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研究分担者 |
江草 宏 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30379078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 歯肉 / ウイルスフリー |
研究概要 |
本研究の目的は、患者の歯肉から培養した細胞をiPS細胞の資源とすると同時に、フィーダー細胞として利用することにより、動物細胞/ウイルス・フリーのiPS細胞技術を追究することである。本年度は、歯科治療の際に切除された歯肉から分離培養した線維芽細胞を、ウシ胎児血清を用いない培地を用いて継代培養する技術を確立した。さらに、この無血清培地を用いた場合、歯肉由来の線維芽細胞は皮膚由来の線維芽細胞と比較して高い増殖能を示すことが明らかとなった。また、従来のウイルスベクターを用いる代わりに、エピソーマルプラスミドベクターを歯肉細胞にトランスフェクション法によって導入することで、ヒトiPS細胞の樹立に成功した。樹立したiPS細胞は、形態的にES細胞様コロニーを示し、多能性幹細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼに陽性を示すとともに、ES細胞特異的遺伝子の発現を示した。これらの成果は、本研究目的である動物由来成分(血清)およびウイルスフリーのiPS細胞の作製が、歯肉細胞を用いることで可能であることを示している。今後は、歯肉線維芽細胞を自己フィーダー細胞として用いた培養方法を検討するために、分離培養した歯肉線維芽細胞を、マイトマイシンCで処理することによって増殖能を不活性化し、これらをフィーダー細胞として用いて、ヒトiPS細胞の増殖維持(継代培養)について検討し、維持されたiPS細胞の性質について詳細な検討を加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、歯科治療の際に切除された歯肉から分離培養した線維芽細胞を、ウシ胎児血清を用いない培地を用いて継代培養する技術を確立した。さらに、この無血清培地を用いた場合、歯肉由来の線維芽細胞は皮膚由来の線維芽細胞と比較して高い増殖能を示すことが明らかとなった。また、従来のウイルスベクターを用いる代わりに、エピソーマルプラスミドベクターを用いる方法を用いることで、ヒトiPS細胞の樹立に成功した。これらの成果は、本研究目的である動物由来成分(血清)およびウイルスフリーのiPS細胞の作製が、歯肉細胞を用いることで可能であることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歯肉線維芽細胞を自己フィーダー細胞として用いた培養方法を検討するために、分離培養した歯肉線維芽細胞を、マイトマイシンCで処理することによって増殖能を不活性化し、これらをフィーダー細胞として用いて、ヒトiPS細胞の増殖維持(継代培養)について検討する。比較するフィーダー細胞には、ヒト皮膚由来線維芽細胞および、従来使用されているマウスSNLフィーダー細胞を用いる。また、自己フィーダー細胞上で培養を維持したiPS細胞の性質について詳細な検討を加える予定である。さらに、iPS細胞の増殖を維持できた歯肉線維芽細胞(自己フィーダー細胞)株とそうでない細胞株における遺伝子発現プロファイルの相違を検討し、歯肉線維芽細胞がフィーダー細胞として機能するための分子を探索する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ウイルスフリーで樹立したiPS細胞を自己フィーダー歯肉線維芽細胞上に移し、このiPS細胞が未分化状態を維持したまま正常に増殖し、継代培養が可能であるかどうかを検討する。これらの検討を行うために必要な研究費を使用する。また、自己フィーダー細胞上で培養されたiPS細胞における未分化細胞マーカーの遺伝子発現をPCR法で、DNAメチル化状態をbisulfiteシークエンス法で解析し、従来のマウスSNLフィーダー細胞で樹立されたヒトiPS細胞と比較検討するための関連試薬の購入に研究費を使用する。さらに,自己フィーダー細胞を用いて樹立したヒトiPS細胞の分化多能性の検討を、胚様体形成による試験管内分化誘導(免疫染色法,PCR解析)、テラトーマ形成能試験(免疫不全SCIDマウスへ精巣への細胞移植)により行うため、これらの費用が必要である。以上について得られた結果を取りまとめ、国内および国際学会にて成果の発表を行うために研究費を用いる。
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