研究課題/領域番号 |
23659900
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
赤川 安正 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00127599)
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研究分担者 |
道川 誠 独立行政法人国立長寿医療研究センター, アルツハイマー病研究部, 部長 (40270912)
宮本 泰成 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00555146)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 歯・咬合の喪失 |
研究概要 |
本年度では,アルツハイマー病発症前のAPPトランスジェニックマウスを抜歯群,非抜歯群の2群に分け,行動実験により学習・記憶・認知機能を評価し,さらにアミロイドβ蛋白質の動態を中心に比較,検討することを目的で以下の通り実施した. 6ヵ月齢のAPPトランスジェニックマウスを上顎両側臼歯を抜歯した抜歯群と未処置の非抜歯群に振り分けた.この時,ステップスルー型受動的回避試験装置を用いて行動実験を行った.抜歯処置から4ヵ月の飼育後,再度行動実験を行い,マウスを屠殺した.マウスの脳組織からアミロイドβ蛋白を抽出し,ELISAキットを用いて抜歯群と非抜歯群における脳内アミロイドβ蛋白の沈着量の差を検討した.さらに,脳組織標本に免疫組織学的染色を施し,脳内のアミロイドβ蛋白の沈着を光顕的に観察する予定である. その結果を以下に述べる.6ヵ月齢で抜歯を行って歯・咬合を実験的に改変させた抜歯群のマウスは未処置の非抜歯群のマウスと比較すると学習・記憶・認知機能の低下が認められることが示唆された.脳内のアミロイドβ蛋白による検討では,モデルとした実験動物の特性により,未だ明らかなアミロイドβ蛋白の沈着は見られないことが明らかになったものの,抜歯群の方が非抜歯群よりもアミロイドβ蛋白量が少ないという結果が得られた.組織標本の観察は未だ実施されていないが,抜歯による歯・咬合の喪失は,マウスの行動に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆された. 本年度の結果から,アルツハイマー病の発症にはAPPから産生されるアミロイドβ蛋白の凝集・沈着が強く関与しているとされる「アミロイドカスケード仮説」と「歯の喪失・咬合の喪失」の間に明確な相関は認められなかったたものの,抜歯により学習・記憶行動に影響を及ぼすことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験では,アルツハイマー病発症前の「歯・咬合の喪失」の影響を検討したが,次年度より,アルツハイマー病発症後における検討を行い,さらにアルツハイマー病と「歯・咬合の喪失」の関連を明らかにする予定である.現在までにアルツハイマー病発症前における歯の喪失・咬合の喪失についてはほぼ解析が完了しており,すでに次年度の研究に着手している.
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今後の研究の推進方策 |
歯の喪失とアルツハイマー病の関連をアミロイドβ以外の要因,例えばストレスやミクログリアなどを含めた検討が必要と思われる.
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次年度の研究費の使用計画 |
脳内アミロイドβの蛋白量を定量する試薬,染色を行う試薬を購入し,解析する予定である.
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