インプラント周囲に過剰な応力が作用すると、それに伴ってインプラント周囲の骨吸収が惹起されることが知られている。応力に伴うインプラント周囲骨の吸収について、本研究では破骨細胞の分布状況を組織学的に検討することによってインプラント周囲骨が骨-インプラント界面と周囲骨外側のいずれから吸収されているかに関する情報を収集することを目的とした。また、有限要素法を用いて、インプラント周囲骨に作用する応力分布を実際の組織、マイクロCTデータを利用して構築したモデルにて検討することとした。これらのデータをもとに、インプラント周囲応力と破骨細胞の分布の関連について検討し、力学的に適切な、つまりインプラント周囲骨が吸収しにくいインプラント形態を提案することを最終目的とした。以上の目的を達成するために、以下の3種類の実験を企画、実施した。 <A.インプラント周囲骨における破骨細胞の分布の検討> ラット脛骨にチタンスクリューを埋入し、28日間経過させインプラント周囲骨の安定を図った後、インプラントに数段階の静的側方応力を作用させた。応力作用1週間後ラットを屠殺し、インプラントを除去して脱灰切片を作製、TRAP染色し、破骨細胞の分布を検討した。その結果、インプラント周囲の破骨細胞はインプラントと周囲骨に囲まれた閉鎖空間およびインプラントに接着した骨の外側のいずれにも観察されることが示唆された。 <B. インプラント周囲骨の応力分布に関する有限要素法的検討> 実際の組織標本より構築した有限要素法モデルにより、インプラント周囲骨においてはスレッド(ネジ山)の頂点周囲の骨にも応力の集中が観察された。 <C. インプラント周囲骨の応力分布と破骨細胞の分布の関連> ネジ山の角度はインプラント周囲の応力分布に影響を与えることが示唆された。
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