研究課題/領域番号 |
23659909
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 治 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60374948)
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研究分担者 |
島内 英俊 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70187425)
鎌倉 慎治 東北大学, 大学院医工学研究科, 教授 (80224640)
穴田 貴久 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30398466)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 石灰化球 / タンパク質 / 骨再生 |
研究概要 |
平成23年度は人工石灰化球の材料学的な基盤の確立を目標とした.石灰化球のマトリクスとして球状アルギン酸の作製を検討した.アルギン酸ゲルのCa溶液内への吐出手段として吹き出しバルブを用意して,種々の操作条件で検討したところ,所望の球状ゲルの作製が可能であることがわかった.球状ゲルにはリン酸カルシウム粒子,細胞,成長因子を導入する計画である.そこで,概に確立している合成方法に基づき(Suzuki et al. Tohoku J Exp Med 164:37,1991),Ca およびリン酸を温度,pH を一定として,OCP,DCPD に関して過飽和となるように調節して析出させたリン酸カルシウムの乾燥沈殿物を一定のサイズに整粒してゲルと混合し,同様の球状ゲル作製を試みている.まだ粒子径を制御できていないが,アルギン酸ゲルとリン酸カルシウム粒子から成る球状ゲルは作製可能であることがわかった.また,球状だけでなく,リン酸カルシウム粒子を混合した状態にて種々の形態のゲルが得られることが確認できた.最終的な生体親和性の確認において最良のゲル形態を決めていく上で重要な所見が得られていると考えられた.一方,細胞をゲルに導入する前に,成長因子の候補と考えている骨芽細胞活性化因子と成り得るリポタンパク質が及ぼす骨芽細胞の応答性をin vitroで検討した.骨芽細胞様細胞であるマウス骨髄由来ST-2細胞の予備的検討によると,リポタンパク質の添加効果が明確ではなかった.培養条件や細胞の種類について条件を詰める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基盤となる材料であるアルギン酸の球状ゲルの試作が可能となったことから,予備検討ながら結晶と細胞導入に向け,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
アルギン酸は細胞の維持には有効であるが,細胞の活性向上には寄与しない材料であると認識されている.球状アルギン酸にMSCを導入して生化学的に評価し,活性向上の程度を見極め,場合によっては成長因子との組合せも検討する予定である.同時にin vitroにおける生体親和性も早めに見極め,開発コンセプトの有効性を早期に判断し開発方向性の修正に反映できるように務める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は 人工石灰化球のin vitroおよびin vivoの評価を行う.MSC を播種した人工石灰化球を3週まで分化培地にて培養後に,骨芽細胞の増殖および関連遺伝子のmRNA 発現を検討し分化を検討する.検索遺伝子として骨芽細胞の初期分化マーカであるアルカリフォスファターゼ(ALP),後期マーカーのosteocalcin,転写因子であるosterix をRT-PCR にて解析する. ラット(12 週齢)の頭蓋冠に自己修復しない9mm径の欠損を作製し,人工石灰化球を埋入し,対照群は欠損のみとする.試料埋入後,4および12週のラット各5匹を検索する.実験期間終了後に頭蓋冠を摘出し,X線学的・組織学的・組織形態学的検討を行う.標本を10 % EDTAで脱灰した後,パラフィン包埋し前頭断方向で薄切の後,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い,組織学的に骨形成について検索するとともに,欠損部内に占める残存移植体および新生骨の割合を,画像解析を用いて組織定量学的に分析する.平成23年度の検討でリポタンパク質の有効性がin vitroの骨芽細胞様細胞のセルラインでは十分に確認できなかった.このことから,細胞をラット骨髄由来のMSCにて検討を加える.本研究においては,OCP 単独で認められた材料表面からの骨再生開始が促進されることを期待するものであるが,HA の前駆体の選択やリポタンパク質吸着の最適化を適時検討して所期の目的を達成する.平成24年度は材料作製,培養細胞回収用ラット,培養消耗品,細胞の遺伝子レベルでの解析試薬,プラスチック製品,人工石灰化球の埋入用ラット等の消耗品経費,成果発表旅費,外国語論文の校閲費,研究成果投稿料等に充当予定である.以上の研究を通じて,人工石灰化球について得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
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